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テクノロジーの進化

必要だから越える。ただ、それだけ。

AIプロダクトの企画から実装まで、領域を軽やかに横断する、テレシーのデータサイエンスエンジニア・欧陽江卉

「事業に必要だから、やる。それだけなんです」。そう淡々と語るのは、株式会社テレシーのデータサイエンスエンジニア・欧陽江卉です。
その言葉通り、「やってみないと分からない」AIと、「決めた通りに動く」システム。まるで正反対の二つを、地続きにつないでいきます。
彼女を突き動かすのは、データの向こうで人がどう動くのかを読み解きたい、という尽きない好奇心。そして、顧客に届くところまで見届けたいという圧倒的なオーナーシップです。
うまくいかないことがあっても、落ち込むより先に「なぜ?」が湧いてくる、その源泉に迫ります。

欧陽 江卉

Jianghui Ouyang

株式会社テレシー プロダクト・ソリューション局 開発部
データサイエンスエンジニア

新卒で株式会社VOYAGE GROUP(現 株式会社CARTA HOLDINGS)に入社し、インターネット広告の配信ロジックの設計・開発・運用に従事。
現在はグループ会社である株式会社テレシーにて、AIを用いて広告の予算配分を最適化する新規プロダクト「ライトニングMMM」の開発に注力。
企画立案、UI/UX設計、データ基盤構築、MLパイプライン(*)構築に至るまで、横断的にプロジェクトに携わっている。

*機械学習モデルの開発から運用までを自動化する一連の仕組み。

日本語も話せないまま、日本へ。「まず飛び込む」で、ここまで来た

―これまでの経歴を教えてください。

中国で生まれ育って、大学3年生のときに交換留学で日本へ来ました。母国以外の場所で学んでみたいくらいの軽い気持ちで、正直そんなに深い理由はありませんでした。来日当初は日本語がほぼ話せなかったのですが、半年ほどして、そろそろいけるだろうと日本語の授業にも飛び込んでみたら、何とかなりましたね(笑)。
ちょうどその頃、Amazonから最初のAlexaが発売され、もっとAIや音声対話を学びたいと思い、そのまま大学院へ進むことにしました。
新卒でVOYAGE GROUP(現 CARTA HOLDINGS)へ入社し、広告配信システムの配信ロジックを作っていました。そのシステムに蓄積されたデータを通すと、人が何にどう反応しているのかが見えてくる。そこに、のめり込んでいきました。

振り返ると、先をきっちり設計するよりも「面白そう」と感じたほうにまず飛び込んでしまう。留学も、研究も、就職も、たぶん全部そうでした。

データで、人の“無意識”を一歩引いて眺める。それが、ただ楽しい

―エンジニアにも様々な専門領域がある中で、データサイエンスエンジニアを選んだのはなぜでしょうか。

シンプルに言うと、「データ」が好きだからです。
数字そのものではなく、データを通して人がどんな心理で動いているかを読み解くことに、ぞくぞくするんですよね。なかでも広告やマーケティングの領域は、メディア、消費者、広告主とステークホルダーが多く、扱えるデータの種類が段違いです。
一つの広告によって、人の心がどう動き、行動がどう変わるのか。一人ひとりに聞いて回らなくても、データを通して何百万人分の行動パターンや無意識の変化を、一歩引いた場所からまるごと見渡せる。
この鳥の目で全体を見渡せる感覚に、たまらなく惹かれています。

―その視点を通して、人間の「無意識」を捉えた具体例はありますか。

開発を進める中で「よく見える広告枠ほどクリックされるはず」という、自明に思える前提が実際のデータを見ると必ずしも成り立たないことに気づきました。
たとえばWebページの一番上にある広告枠は、ページが読み込まれるたびに必ず目に入ります。しかし、ユーザーはすぐにスクロールして本文へ向かってしまうので、クリック率はむしろ低くなることがある。「見えている」と「クリックされる」は、別物だったんです。
この気づきをもとに、広告枠の位置と視認性の組み合わせを配信ロジックに反映したところ、クリック率の予測精度が向上しました。
ユーザー自身も意識していない行動のクセが、データには確かに刻まれていて、それが成果につながる。こういう瞬間を味わえるからこそ、データサイエンスエンジニアという仕事は面白いんです。

「必要だから、やるだけ」。分断をなくし、最速で価値を届ける

―仕事を進めるうえで大切にしている軸はありますか。

役割で線を引かないことでしょうか。
「事業にとって必要だからやる」理由はそれだけです。でもこれは使命感から無理して守備範囲を広げているわけではありません。自分の担当かどうか、大変かどうかよりも、「見えていない部分がある」ことのほうが気になってしまいます。

広告配信システムの配信ロジックを作っていた頃も、開発だけしていると「実際に使う人が何に困っているか」が見えてこない。それがどうにも落ち着かないんです。
だから、エンジニアという立場にこだわらず、自分から広告運用の現場に入れてもらいました。
実際にやってみて、初めて現場の感覚がつかめましたし、そこで見つけた課題をもとに設計した機能は、今でも欠かせないものとして使われています。

事業を前に進めるために必要なら自ら動く。特別なことではなくて、あれこれ悩んで立ち止まる前に、もう飛び込んでいるんだと思います。

―現在取り組まれている「ライトニングMMM」の開発でも、まさにその姿勢で企画からデータ基盤、MLパイプライン構築まで横断的に携わっていますよね。

そうですね。ただ、これは私の好みというわけではなく、そのほうが理にかなっているからです。
AIのプロダクトは「やってみないと分からない」ことの連続で。作って、試して、うまくいかなくて、直す。それをとにかく何度も繰り返します。しかも、その「やってみないと分からない」モデルを「決めた通りに確実に動く」システムに載せて、初めて製品になる。
工程の受け渡しが増えるほど、認識がズレて、待ち時間が増えて、回転が落ちていく。
一周通して頭の中で回せる人間が、チームに一人いたほうがいい。
全部の工程に足を置いていると、ズレにすぐ気づけるし、判断も速いし、狙いもぶれません。
最近は複数のAIエージェントも並行で走らせていて、自分の脳のほうが追いつかないくらいなんですけど(笑)。
それでも、全部の輪郭を自分で描いて形にできるのが、性に合っていると思います。

悔しさより、「なぜ?」。まっすぐ問い続けられる、頭の中

―どうして、そこまで迷いなく動けるのでしょうか。

おそらく、いちいち感情で立ち止まらないからだと思います。
例えば、長い時間をかけて作ったモデルがいざ現場ではまったく機能しなかったこともありました。一般的には「失敗」や「挫折」と呼ぶのかもしれませんが、私はそう受け取っていないんです。
感情が揺さぶられる出来事というより、ただ起きた一つの事象として見ている感じでしょうか。落ち込みや悲しみに掴まる前に、「なんでうまくいかなかったんだろう?」という純粋な問いが先に立ち上がります。

ロジックのどこに想定と違う部分があったのか。まずは自分の設計を疑って、とことん突き詰めていく。
感情の波が来る前に、「なぜ?」が先に動き出す。だから、止まらないし、折れない。それだけなんだと思います。

―その「なぜ?」を突き詰める思考は、いつ頃から身についたものなのでしょうか。

子どもの頃からずっと変わっていないですね。整合性が取れていないルールを、そのまま受け入れるのが昔から苦手でした。例えば、学校で「とにかく100回書いて覚えなさい」みたいな宿題が出たとき、先生に「なぜ丸暗記のために書き写さないといけないんですか?」と食い下がって、よく困らせていました(笑)。
この性分が、今の仕事での「なぜこのシステムが必要なのか」「なぜこの課題が解けないのか」に向いているのではないかと思います。

何者かになるためじゃない。 ただ、今を、面白がって生きる

―今、いちばん夢中になっていることは何ですか。

AIという技術そのものかもしれません。
LLM(大規模言語モデル) の進化で、エンジニアのあり方が根っこから変わっている時代ですよね。その激動の真ん中にいられること自体が、単純に刺激的なんです。

だからこそ、その変化を傍観するのではなく自分の手でも確かめたくて。自作のマシンを組んで、ローカルLLMを追いかけたりもしています。
そうやって得た手触り感を活かして、いま作っている新規プロダクトを「次世代テレシーの最強の武器」に育て上げていく。その挑戦が、たまらなく面白いです。

―エンジニアの在り方が変わっていく中で、この仕事を面白がり続けられるのは、どんな人だと思いますか。

最初から先のキャリアを緻密に設計する人よりも、目の前にある「好奇心をそそられること」や「必要なこと」に、素直に飛び込める人なんじゃないでしょうか。
飛び込むと、できない自分に必ず出会います。でもそこで立ち止まらずに、変化そのものを素直に受け入れて進んでいける人が、結果的に熱量をもって走り続けられると思います。
私自身、これからもただ、今を面白がりながら進んでいく。それだけなんだと思います。