経営の進化
「次の時代を作りにきた」渡邉英樹がCARTAで描く未来
自ら足を運び、先陣を切る「ハンズオン」スタイルの経営者

2025年11月、CARTA HOLDINGSの代表取締役社長に就任した渡邉英樹。1996年にエヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社(現在の株式会社NTTドコモ、以下ドコモ)へ入社し、「iモード」の立ち上げ期を経験した後、楽天オークションの立て直しや「dマーケット」事業の創出に関わってきました。常に時代をつくる仕事を手がけてきた渡邉に、これまでのキャリアとCARTAの未来について聞きました。
渡邉 英樹
Hideki Watanabe
株式会社CARTA HOLDINGS
代表取締役社長 執行役員
「iモード」、そして合弁事業の推進。時代の大きな転換点に、当事者として立ち会い続けた
―1996年に新卒でドコモへ入社されていますが、当時の入社理由から教えていただけますか。
当時はまだ、携帯電話が限られた人だけに使われている時代でした。しかし、これからは絶対にインターネットの波が訪れ、携帯電話が世の中に広がっていくと確信し、無線通信の業界を中心に就職活動を行いました。無線通信が持つ無限の可能性に面白みを感じたのです。今でいう「AIの分野に行きたい」と考えている人と同じ感覚だったのだと思います。
―入社後やってきたことは、いわゆる本流と言われるお仕事ではなかったとか。
当時のドコモの本流といえば、端末・回線販売の代理店を担当する営業か、基地局を建ててネットワークを広げていく業務でした。私はそうした部署ではなく、入社3年目の1999年にiモード事業を担うゲートウェイビジネス部に配属されました。 当初は外部から招聘された人材で構成されていましたが、ドコモ社員も入れていく方針となり、その初回の組でした。そこでは新規事業で次々に発生するトラブルをはじめ、早期に解決すべき課題への対応や、サービスの根幹となるコンテンツプロバイダー開拓など様々な業務に携わりました。当時にしては珍しい「携帯電話向けコンテンツのサブスクリプション」モデルですね。
―2001年には、米国法人のドコモUSAで勤務、帰国後は再びiモードのコンテンツ開拓などを担当した後、2007年には楽天へ出向されます。ここではどんなことをされたのでしょうか。
楽天とドコモのジョイントベンチャーである楽天オークション株式会社の事業テコ入れです。共同で事業を立ち上げたものの苦戦していたため、それを軌道に乗せることが私のミッションでした。
ここでは、ビジネスの枠組みデザインと実現を繰り返しました。楽天オークションは、競合との差別化として匿名で出品と落札ができる「エスクロー」という業界初の仕組みを作っていました。これを皮切りに両社の様々な部署に働きかけて集客と収益化の施策に奔走し、結果として出向から3年目で黒字化を達成。その後ドコモに帰任しました。
両親会社のリソースを結集して事業のポテンシャルを最大化した当時の経験は、現在のCARTAでの役割とも重なる部分が多いと感じています。

独自のコンテンツビジネスを開発し、次世代データマーケティングに至るまで
―2010年に復帰された後、「dマーケット構想」を主導されました。どのような経緯があったのでしょうか?
帰任した2010年頃は、ちょうどiPhoneが登場した時期でした。社内でもまだ危機感は浸透していませんでしたが、仮にスマートフォンが主流になればiモードが基軸の垂直統合型のビジネスモデルは成り立たなくなります。
その解決策として生まれたのがdマガジンやdゲーム、dショッピングといった「dマーケット構想」でした。
コンテンツ配信インフラを通じてコンテンツ供給者の皆様を「支える側」にいたドコモが、自らコンテンツを「作る側」になった大きな変革期です。会社としてかなり早いタイミングで大きく舵を切り直したと思いますし、主導してゼロからサービスを立ち上げたという意味で私のキャリアの中でもハイライトと言える事業創出でした。
―2020年にdポイントアライアンス部に異動されますが、ここではどんなことを?
もともとドコモとしてはdマーケットのコンテンツ販売が終着点と考えていませんでした。顧客接点から得られるデータを起点としたビジネスが今後の基盤になると想定していました。
でも顧客データを売りにする場合、ドコモ回線のユーザーだけではID数が十分とは言えません。そこでdポイントです。ドコモ回線のユーザーでなくても日常の中で使えます。あらゆる生活シーンで使えるよう、dポイントの経済圏の拡大に尽力しました。今ではコンビニエンスストアから大手のオンラインショッピングモールまで幅広く浸透しています。
ドコモとしてはユーザーも増えて、ID数も1億を超えました。データ活用を本格化させるべき時です。
マーケティングにおけるデータ活用を考えたとき、ドコモ自前の顧客接点という限界を越えたい。そこでCARTAに仲間に加わってもらい、今に至ります。
CARTAにはWebやアプリはもちろんのこと、コネクテッドTV、リテールメディアまでありとあらゆるシーンでデータと生活者をつなぐ力があるからです。
私が学生のころ無線通信に無限の広がりを感じたように、CARTAに無限の進化の可能性を感じています。

成長環境を追求せよ:大きなスケール、大きな責任、ハードシングス
―これまでのキャリアを通じて、ご自身の成長や思考に一番影響を与えている要素は何ですか?
海外で生活しながら国際的な取引の場に居合わせる経験ができたことは大きかったです。圧倒的に視野が広がりました。
これまで常に「環境を追い求め続ける」ことを意識してきました。自分自身の能力には限界がありますが、それは身を置く環境によって伸ばすことができます。やはり大きいスケールを実現できる環境に身を置くことが重要です。
私の場合は急成長期の携帯電話という事業環境や、楽天・ドコモの巨大なアセットをとことん使い倒せる環境がそれにあたります。またスマートフォンの登場など時代が変わる節目をいくつも経験できたことが大きな糧になっています。
―事業開発では厳しい局面もあったと思います。いわゆるハードシングスにはどのように向き合ってこられたのですか。
よく聞かれるのですが、実は「大変だ」とか「つらい」と思ったことはありません。ゲームをよくやるのですが、攻略すべき新しいネタやクエストが来たような感覚を持っています。仕事は人生を楽しむ材料と捉え、それを乗り越える喜びを感じるタイプなのでしょう。
逆に自分でなくてもよい仕事や「これさえやれば儲かる」のようなことを任されたら、自分にとってはハードシングスですね(笑)。
―そうした視点から見て、CARTAが挑むSingle ID Marketing(*1)は、どのような機会だと捉えていますか。
非常にスケールの大きな機会です。私の視点からすると、CARTAにはNTTドコモの膨大なデータと電通のビジネス知見を使い倒せる環境があり、そこに自社がもつビジネス開発力と技術基盤が掛け合わさっています。
国内でここまでリッチなデータを使える場所は他にありませんし、AIが普及する時代背景という点からも世界的プレイヤーよりもできることが多いのではないでしょうか。
*1 Single ID Marketing = 市場調査から効果検証まで、バリューチェーン全体を「ひとつのID」でつなぐ次世代マーケティングモデル

時代の変わり目、その当事者にならないか
―Single ID Marketingと共にCARTAが目指すゴールイメージを教えてください。
テクノロジーがしっかりとマーケティングを補完し、事業会社と生活者の方々双方に新しい価値が提供されている状態です。単に「企業が儲かります」だけではなく、使い方次第で人間らしく豊かで、環境負荷が低いサステナブルな社会の実現に貢献できます。
―実現の阻害要因があるとすれば、何ですか。
既存ビジネスを気にしすぎたり、失敗を恐れたりする「保守的なマインド」です。無限に挑戦できる環境があるのですから、社内外への変な気遣いはせず、粘り強く挑み続けるフロンティアマインドが不可欠になります。
iモードのときも「パソコンがあればいらない」「こんな小さな画面で使われるはずがない」などの不要論、できない理由がたくさんありました。以後の事業でもその繰り返しです。時代は後からついてきます。事業開発とはそういうものです。
―CARTAで挑戦する人が得られるものは何でしょうか。
「時代を作る」という得難い体験です。AIやSingle ID Marketingなどの次世代マーケティングが本格化するこの時代の変わり目に、私たちは当事者として立ち会っています。 この舞台を最大限に活用し、どんな未来を切り拓けるか。私自身、皆さんと共に挑むことを心から楽しみにしています。一緒に次の時代を作りにいきましょう。



