事業の進化
組織の在り方を問い続けてきたリーダーが語る。CCIが、積極的に新領域にチャレンジする理由
CARTAのシナジーで大きなゲームチェンジが起こせるような仕組みをつくりたい。
岸岡 勝正
Katsumasa Kishioka
株式会社CARTA HOLDINGS執行役員
株式会社CARTA COMMUNICATIONS取締役
2021年7月(株)CARTA COMMUNICATIONS取締役に就任。2022年1月(株)CARTA HOLDINGS執行役員に就任。
――岸岡さんは2007年にサイバー・コミュニケーションズ(現・CCI)に新卒で入社されました。志望動機を教えてください。
岸岡勝正(以下、岸岡):実は就職活動時にデジタル業界に興味を持ったのは、現在CARTA HDの代表取締役会長を務める宇佐美さんがきっかけです。当時ECナビの社長として会社説明会の場に登壇していた宇佐美さんは、自社の事業内容や経営方針だけではなく、デジタル業界に関する話も丁寧に説明していました。「10年後、20年後こうなっていくだろう」とデジタル業界の未来を踏まえた上で、ECナビの存在意義を説明している姿を見て、デジタル領域に可能性を感じたんです。残念ながら、ECナビは2次選考で落ちてしまいました(笑)。が、あの頃から15年以上経った今、宇佐美さんと一緒に働くことになるとは、不思議な縁があるものだなと思っています、エモいですね(笑)。
私が就活をしていた2006年頃、デジタル企業は伸び盛り。さらに新卒売り手市場も重なり、成長期にあるデジタル企業は新卒社員を数百人単位で採用していた時代。私も複数の企業から内定をもらっていた中でCCIに決めた理由は、今でいう社会貢献を連想させるコミュニケーションスタイルが際立っていたから。自社の「強さ」をアピールポイントに前面に押し出す他社に対し、CCIはメディアレップとしての「矜持」を大切にしている印象でした。「メディアの成長と健全な発展のために」「より豊かな情報社会を創るために」と、社会貢献も含めたビジネスを展開する姿勢に惹かれました。
――入社後は、どのようなキャリアを歩まれたのでしょうか?
岸岡:最初の1年間はメディアのオペレーター業務に従事していました。2年目の2008年からメディア担当として新聞社のデジタル広告販売や企画立案に携わり、2011年から電通新聞局に出向し、6年後にCCIに帰任しました。その後グループマネジャーのポジションを経て、2019年からディビジョンマネジャー、2021年7月の新CCI設立時に取締役に就任。メディアのバイイングやビジネスディールの構築、ソリューション開発の領域を担当しています。今年からはCARTA HDの執行役員も兼務し、広告営業やマネタイズの仕組みを考えるマーケティングソリューションに関わっています。
――新聞社の業務に長く従事されていたんですね。
岸岡:今私が持つ考え方は、新聞社と仕事をしていたときの経験が基礎となっています。当たり前に成り立っているビジネスも、新たに出現した何者かによってゲームチェンジする可能性がある。私が新聞社に関わり始めた頃の新聞は、デジタルの台頭や時代的要因により、ビジネス変革が求められていたり、新しい手立てを打つ必要があったりと、大きな変化が訪れている時期でした。デジタル事業は、紙媒体や紙面広告を揺るがす存在である一方、新聞というマスメディアの業況を好転させるツールでもありました。メディア担当として「新聞業界のビジネス変革の一助になりたい」という想いを持ち、自分にできることに懸命に取り組んでいましたね。そんな中で若いうちに、急速に縮小する紙面ビジネスと急速に成長するデジタルビジネスを同じ取引先内で同時に見ていたので「現状に満足し、大きな流れを見失うとといつの間にか世の中から置いてけぼりになり、価値や収益が棄損されかねない」という現実を目の当たりにできたのは、その後の自分にとってプラスになったと思います。
――新生CCIとして、従来のCCIから引き継ぎたいこと・変えていくべきことは何ですか?
岸岡:引き継ぎたいものは、真摯にパートナーや取引先に向き合う姿勢です。ここで言う真摯な姿勢とは、パートナーのビジネスがポジティブな時だけではなく、ネガティブな時でも常に向き合うということです。先人の先輩たちが、そのような姿勢を続けてくれたおかげで、今のCCIがあります。CCIとお付き合いがあった方が、転職などで会社が変わっても、「新しい会社でも、CCIと仕事がしたい」と言ってもらうことが多いんです。それは今の私たちというより、先人が築いた信頼の証。先輩たちが切り開いてくれた道があっての現在だと実感しているし、失ってはいけない考え方だと思います。
一方、変えていくべきことは、時代の変化を受け入れビジネススタイルに柔軟性を持つこと。自分たちのビジネススタイルに幅を持たせて、時には大胆に変化させることは必要です。過去で言えば、予約型広告の収益を重視するあまり、運用型広告の潮流に乗り遅れたことが代表的な事例ですね。時代の変化をよく考えて、時には今の収益を毀損させることでも、先々を考えて新しい手を打っていく考えを持つべきです。
――この1、2年、CCIは新しいサービスや領域への参入を積極的に行っています。その際、意識しているポイントはありますか?
岸岡:参入する業界や領域を絞っているわけではありません。消費者やパートナーのニーズがあり、CCIの経験や資産が活かされる領域には全て挑戦していこうというスタンスです。直近だとBarrizの設立や、コンテンツデータマーケティング(CDM)、Mediatorへの出資、Commerce Container(コマースコンテナ)、Social Adtrim、TORAMeなどのサービスを立ち上げています。広告配信に行き着く前のマーケティングサービスを拡充することで、取引先に対する打ち手を増やし、顧客理解やユーザー理解を深めることができたと感じています。
――新たな取り組みを続ける上で、チームづくり、組織づくりにおいて、重視していることはありますか?
岸岡:まず自分自身がチャレンジする姿勢を見せることです。自分自身が行動して、これからのCCIの在るべき姿を体現する必要がありました。私だけが新しい分野に参入したいという意気込みを持ち、どれだけ頑張っても、できることには限界があります。CCIが強くなるために何をすればいいのか、最短距離で考えられる人を増やせるよう手本となる事例をつくる努力はしました。CCIは、電通のグループ企業という立ち位置で、様々な顧客やパートナーと向き合う機会があります。その実務経験の中で、「なぜこういう取り組みをしないのだろう」「こういうビジネスにチャンスがあるのではないか?」、そんな思いを持っている社員は沢山いるんです。そのような思いのある社員が挑戦出来る機会をつくり、彼らの声を拾い上げて形にしていきました。また、私が全ての意思決定をするのではなく、プロジェクトオーナーに裁量を与えてスピード感と責任感を持ってもらえるように意識してます。
――CCIのビジネススタイルを変えたとも言えますね。
岸岡:投資の考え方が変わったのかもしれません。今までのCCIは、広告枠販売に対する投資がほとんどでした。広告販売への投資も引き続き行っていますが、それだけではなく、組織や人や時間も投資対象であると考えて、検討できるビジネスの幅を広げるように意識してます。
これは2019年にVOYAGE GROUPと経営統合したこと、そしてディビジョンマネジャーになったことが大きなターニングポイントだったと思います。次々と事業展開をすることで収益を上げてきたVOYAGE GROUPのビジネススタイルから投資の仕方はいくらでもあると教わりました。
またディビジョンマネジャーとなり、先輩たちが築いた取引先との信頼関係に気づかされた一方で、CCIの価値をこれだけ信じてくれているパートナーがいれば、もっと出来ることがあるはずだと改めて思いました。社内的には経営統合も進み、お手本になるVOYAGE GROUPのケーススタディも近くにあったので次のステップに進むには今だな、と思ったのです。事業開発に長けたVOYAGE GROUPと長年広告事業を主軸に成長を続けてきたCCI。両社のこれまでの経験を融合させてCCIの事業に反映させるよう意識して動いてます。
――今後CCI、そしてCARTA HDをどのような会社にしていきたいですか? またチャレンジしたいことは何ですか?
岸岡:CCI、そしてCARTA HDに所属していることを、社員に誇ってもらえるようにしたいですね。社員のステージングはそれぞれ異なるので、会社に所属することで得られるものを定義づけするのは難しいのですが、社員の人生がより豊かにできるような経験が積める会社にしていきたいです。
個人的な夢としては、経営統合した両社のGoodPointを合わせて、社会や日本の価値を上げられるような、大きなゲームチェンジを起こせるような、そんな仕組みを自分たちの手でつくっていきたいと本気で思っています。CARTA HDの新たな経営理念である「The Evolution Factory」を体現し、日常や業界に改革を起こすようなことがしたいですね。現代は、サービスの開発背景や作り手にスポットが当たる時代です。CARTA HDの社員が魂を込めてつくってきたものが認められれば、エボリューションを起こせると信じています。