Corporate Site

EVOLUTiON

カルチャーの進化

経営トップによる対談インタビュー。経営理念策定プロジェクトの裏側と新生CARTA HDに懸ける想いを聞く

「The Evolution Factory」-自らをアップデートし、時代の進化を創っていく

VOYAGE GROUPとサイバー・コミュニケーションズが経営統合し、株式会社CARTA HOLDINGSが設立されてから3年。2022年1月、2社は完全融合を果たし、新しいスタートを切りました。新生CARTA HOLDINGSとしてさらなる事業成長を目指し、経営理念も新たに策定。今回は、代表取締役会長の宇佐美進典と代表取締役社長の新澤明男に、経営理念が決まるまでのプロセスや背景、経営統合による変化を聞きました。

宇佐美 進典

Shinsuke Usami

株式会社CARTA HOLDINGS
代表取締役会長

トーマツコンサルティング(現デロイトトーマツコンサルティング)などを経て、1999年にアクシブドットコム(現・(株)CARTA HOLDINGS)を創業。2005年〜2010年までサイバーエージェントの取締役も兼務し、メディア部門副統括・技術部門担当役員としてアメーバの成長等に携わり幅広く経営の実務を経験する。2012年にサイバーエージェントよりMBOさせ、2014年マザーズ上場、2015年東証一部へ市場変更を推進。2019年のサイバー・コミュニケーションズとVOYAGE GROUPの経営統合に伴い、(株)CARTA HOLDINGSの代表取締役会長に就任。

新澤 明男

Akio Niizawa

株式会社CARTA HOLDINGS
代表取締役社長

ソフトバンクを経て、1998年に(株)サイバー・コミュニケーションズ入社。営業本部、メディア本部の部門長などを歴任。2005年執行役就任。新事業推進本部長としてeコマースやCGM系ソリューション開発などの新たなビジネスモデル構築を担当。2007年にCOO(最高執行責任者)就任。2010年に代表取締役副社長、2013年より代表取締役社長に就任し、日本のインターネット広告事業の中核企業を牽引。2019年のサイバー・コミュニケーションズとVOYAGE GROUPの経営統合に伴い、(株)CARTA HOLDINGSの代表取締役社長に就任。

――はじめに、新たな経営理念と、そこに込めた想いをお聞かせください。

新澤明男(以下、新澤):CARTA HOLDINGS(以下、「CARTA HD」)の新しい経営理念は「The Evolution Factory」です。匠の知識と力を持ったプロフェッショナルが集まり、企業や社会に進化をもたらす工房になろうという意味合いがあります。CARTA HDは一つの事業を行っているのではなく、デジタルを通じ、多様で新しいサービスやコンテンツを生み出してきた会社です。20以上のビジネスを展開する中で、すべての事業に共通しているのは、「時代の進化を創る」という目的にフォーカスしていること。それは今までもこれからも変わりません。CARTA HDとして何を目指しているのか考えたとき、企業・産業の進化を推進する「進化推進業」である、という答えが、この経営理念に込められています。

――2022年1月の完全融合により変化した点を教えてください。

宇佐美進典(以下、宇佐美):大きく変わったのは組織体制です。2019年の経営統合以降は、VOYAGE GROUPとサイバー・コミュニケーションズがCARTA HDの傘下に入り、事業においては協業を重ねてきましたが、人事体制やコーポレート機能はそれぞれ保持したままでした。今回、グループ各社のコーポレート機能や経営方針をCARTA HDに集約、統一し、新たなCARTAグループとして始動することになったのです。

今までは、社員の所属先はVOYAGE GROUPとサイバー・コミュニケーションズで分かれていましたが、完全融合を機に、全員が「CARTA HDの社員」という位置付けになり、「VOYAGE GROUP」と「サイバー・コミュニケーションズ」の会社名は消滅しました。社名がなくなる寂しさも少しはありましたが、VOYAGE GROUPも、事業内容に応じながら、幾度かの社名変更を経てたどり着いた名称です。社名を変える度に、これから自分たちもアップデートさせて大きなチャレンジに挑むんだと、気持ちを新たにできました。今は、CARTA HDの一員として新しいビジネスを創出できる喜びと期待感の方が勝っています。

新澤:私も寂しさというより、ポジティブな気持ちです。20年以上名乗ってきたサイバー・コミュニケーションズ(CCI)は、業界的には馴染みのある名称だと思いますが、これからはお取引先様をはじめ、多くの方に「CARTA HOLDINGS」にも愛着を持っていただけるよう、価値ある取り組みをどんどん遂行していきたいですね。

――経営理念策定に向け、プロジェクトを発足したと聞きました。いつ頃始動したのですか?

新澤:完全融合が決まった2020年の秋頃から始まりました。経営理念のフレーズが確定したのが2021年の10月頃なので、策定までに1年ほどかかりました。完全融合に当たって発足した複数のプロジェクトを宇佐美さんと私で分担することになり、経営理念のプロジェクトは私が担当しました。

宇佐美:私はこのプロジェクトに直接関わることは少なかったのですが、新しい経営理念を初めて聞いたとき、サイバー・コミュニケーションズでもなくVOYAGE GROUPでもなく、CARTA HDとしてのこれからを象徴する素晴らしい言葉だと感じました。「進化を創っていくんだ」という強いメッセージ性が溢れており、体に染み込むようにスッと受け入れられましたね。

――プロジェクトメンバーの選定について教えてください。

宇佐美:8名のプロジェクトメンバーを、新澤さんと私で決めました。メンバー集めの部分では、私なりに多様性を重視したつもりです。会社への想いがあることはもちろんですが、エンジニアだったりデザイナーだったり、職種や属性に偏りなく、さまざまなレイヤーのメンバーを選定しました。ただ、元VOYAGE GROUPのメンバーは個性的過ぎて、取りまとめる新澤さんとしては大変だったかもしれません。「新澤さん、後はお任せします」という気持ちでした(笑)

新澤:「難易度の高いメンバーを加えてきたな」と(笑)。とはいえ、多様性を表現する上でエンジニアの視点がカギとなったのは事実です。200人近くいるエンジニアの代表として、CARTA HDの新CTOに就任した鈴木がメンバーとして加わりました。彼には、プログラミングやコーディングができ、独立して仕事をすることも可能なエンジニアが、組織に帰属する意義や捉え方を教えてもらいました。
もともと所属していたVOYAGE GROUPもしくはサイバー・コミュニケーションズへの思い入れや愛着を強く持っている点も、プロジェクトメンバーを選定する上で重視したポイントです。CARTA HDのあるべき姿を考えていく上で、メンバー同士がVOYAGE GROUPとサイバー・コミュニケーションズ両社のカルチャーや価値観を理解し合うことは不可欠でした。経営統合から3年経ち、文化の違いなどは見えてたものの、深掘りまではできておらず……。ですので、両社のカルチャーを深く認識し合うことから始めました。

――そこからどのように進めていったのでしょう?

新澤:基本的にオープンなスタイルで進めていきました。

宇佐美:全社員に対してWeb上でアンケートを取ったり、インタビューをしたりと、積極的に社員の意見を取り入れていましたよね。

新澤:そうそう。宇佐美さんをはじめ、会社の経営層と中核メンバー40人くらいに1時間ずつインタビューをしたり、アンケートを通して社員のリアルな声を吸い上げたりと、CARTA HDを再定義するための材料を全社員から集めていました。プロジェクトメンバー8人だけで決めるというよりは、社員みんなで作っていこう、というスタンスでしたね。

またプロジェクトの進捗状況も社員に向けてオープンにしていました。これは、私がVOYAGE GROUPのカルチャーの中でも特に魅力に感じていたスタイルを取り入れたものです。組織の大切な事柄を決めるとき、逐一社員と共有しているのが印象的でした。やはり社員からしてみたら、自分の知らないところで勝手に経営理念が決まっていて、いきなり発表されても、イメージが湧かないじゃないですか。だから毎週議事録を公開して、経営理念が作られるプロセスを可視化できる状態にしていました。

――苦労した点は何でしょうか。

新澤:やはりプロジェクトの概要をオープンにした分、多方面からあらゆる意見をもらえたものの、折り合いをつけるところは悩ましかったですね。多様性を意識してプロジェクトメンバーを選定したことも、当然ながら、苦労した要因になりました。性別や職種、所属していた会社など、属性によって180度意見は違いますからね。こちらはこう言っているけど、あちらはこう言っている、という状況はいくつもありました。

宇佐美:衝突することもありましたよね。

新澤:議論を重ねる場面は多かったですね。特に言葉の受け取り方の違い。たとえば「誠実」という単語一つとっても、8人いたら8通りの捉え方があります。一つの標語を作るという最終目標がある中で、ひとりひとり異なる価値観を一つにまとめていくことに時間を費やしました。

宇佐美:私が介入すると、新澤さんもメンバーも進めづらいと思っていたので、要請を受けたら力になるというスタンスを心がけていました。新澤さんから情報共有はされていたので、大変そうだなと思いながらも、「やり切ってくれるだろう」と見守っていましたね。

新澤:私は、いろいろな意見が飛び交う中で、経営陣が目指すCARTA HDの形や指針といった、北極星的なゴールを常に頭に置いていました。経営理念のミーティングの場においては、社員間、そして社員と経営陣の間を橋渡しする役割を担うようにしていました。様々な深い議論を経て、みんなが納得できる言葉を作れたと思っています。

――2019年の経営統合で得たもの、課題となったことを教えてください。

宇佐美:経営統合して本当によかったと思っています。サイバー・コミュニケーションズは電通グループのインターネット広告領域を担い、自分たちがネット広告をリードし、新しいスタンダードを作っていくんだという気概を持っている会社です。一方 、VOYAGE GROUPは、デジタルを通じて新しい事業を生み出すことに軸足を置くスタートアップ企業が集まったような会社。事業内容は重なる部分もありますが、ポジショニングも方針も違う2社が手を組むことは大きな挑戦でもありました。結果として、お互いの良さが化学反応を起こして新しい事業領域に広げていけた。次なるステップアップのためのベース作りができた3年間だったと思います。

新澤:おっしゃる通りですね。構築されたビジネスモデルに基づいて成果を生み出すサイバー・コミュニケーションズと、人にエッジが立ち、個の強さが際立つVOYAGE GROUPですが、社員みんな仕事に情熱的で真摯に向き合っていることは共通していました。一生懸命な人間が揃っている。だからCARTA HDとして新しいスタートを切った今、社員が自分らしい表現方法で生き生き働ける組織を作っていくことが重要だと思います。

宇佐美:もちろん課題もありましたね。経営統合して1年経ったタイミングでコロナ禍となり、2社の社員同士がリアルでコミュニケーションを図れる場が少なかったのは想定外でした。ただでさえ、お互いを認め合うことが重視される統合において、なかなか相手の深部にまで関われないもどかしさはありました。

新澤:拠点もVOYAGE GROUPは渋谷、サイバー・コミュニケーションズは東銀座と距離があり、時間の制約上行き来が難しいですよね。今後は、新しいオフィススタイルを模索しながら、物理的にも統合していく予定です。

――最後に、新生CARTA HDとしての展望をお聞かせください。

宇佐美:2019年にCARTA HDという形で経営統合し、この1月に経営理念や人事制度を刷新して完全融合を果たし、ようやくスタートラインに立ちました。進化推進業を掲げる組織として、自分たちが進化していく、そして自分たちが関わる産業や世の中を進化させていく意思を持って、社員一同力を合わせて実現させていきたいです。そのための共通言語である経営理念が、私たちの背中を押してくれると思います。

新澤:宇佐美さんが言った通りで、ようやく経営理念を含め、CARTA HDとしての明確な方向性が定まりました。「The Evolution Factory」の言葉を社員全員が胸にしながら、自分の事業、自分の仕事が、本当に産業を進化させているのか、自分は進化しているのかと問いかけながら働いてほしいですし、同じ想いを持つ仲間を集めていきたいです。CARTA HDの可能性はどこまでも広がっていると思うので、今の事業に留まることなく突き進んでいきます。