テクノロジーの進化
高い開発力とスピーディな営業体制が成長を牽引。グループ各社との協業で可能性をさらに広げる「PORTO」の歩み
注目されるコネクテッドTVやコンテキスト広告にも新たに取り組む
吉田 大樹
Hiroki Yoshida
株式会社PORTO
代表取締役社長
2021年1月に、VOYAGE GROUP(現CARTA HOLDINGS)の運営する統合マーケティングプラットフォーム「PORTO」を会社分割して株式会社PORTOを設立し、代表取締役社長に就任。
―まず、PORTOのサービス概要と独自の強みを教えてください。
吉田大樹(以下、吉田):PORTOを一言で表すと、ブランド広告主向けのアドプラットフォームです。自社開発しているDSPを活用し、クライアントが抱えるマーケティングの課題解決に取り組んでいます。PORTOの特長は、オン・オフを問わないメディアを跨いだ広告の配信・管理を統合的に実現している点です。DSPと聞くと、Webサイトやアプリのバナー広告枠へ出稿するイメージが強いと思うのですが、私たちはそれらに加えて、動画・音声広告、デジタルサイネージへの配信、さらには広告効果の検証・分析も統合して行っています。
PORTOは、「ブランド広告領域のサービス」と標榜し、2019年に立ち上がったプロダクトです。デジタル広告の品質基準を満たしている証明であるJICDAQ認証は、CARTA HDの中でもいち早く取得しました。ブランドセーフティの担保やアドフラウドの排除など、ブランド広告を扱う上で重要な対策も実施し、安全な広告出稿に努めています。ただしこれらは、我々にとっての強みでは決してなく、最低限、当たり前にやるべきことだと捉えていますね。
―統合的な広告配信を実現できる理由は何でしょうか。
吉田:開発の観点でも、セールスの観点でも、ホスピタリティや小回りが利くことが、理由にあるのではないでしょうか。
まず開発に関してですが、開発力は、エンジニアリングに長けているVOYAGE GROUPと合併したことで、より強くなったと感じています。PORTOをリリースして3年ほど経ち、さまざまなクライアントの事例や競合他社のリリースを見てきましたが、配信から分析に至るトータルな管理、及びその実績をここまで実現できている会社は他にないという自負があります。複数メディアに配信する場合も、メディアごとのフリークエンシー(広告接触回数)やブランドリフトなどの細かいデータを一括管理しています。しかもスピード感を持ってプロダクト開発できるのは、手前味噌ながら優れた技術力だと感服します。
もちろんセールス力も、統合的な管理を実現するための大切な要素だと思います。正直うちは結構泥臭く営業をしている方なんです。大手や外資系のアドプラットフォームでは、提案や開発に関する社内への確認に時間がかかるケースもあるようですが、当社は小さな組織だからこそ小回りを利かせて迅速かつ柔軟に対応している。自ずとプロダクトのクオリティも上がっていきます。
開発と営業、どちらの観点においても、ホスピタリティを根幹に据える姿勢が、結果的にクライアントから支持を集めるサービスを作り上げているのだと思います。
―さまざまな事例を蓄積してきたとのことですが、PORTOだからこそ効果を上げることができた事例を教えてください。
吉田:先ほどからお話している統合的な配信がうまくいった事例の一つでは、テレビCM、デジタルサイネージ、デジタル動画の3メディアで広告を出稿しました。ちなみに、PORTOのプラットフォームから配信できないテレビCMはデータをいただき、他2メディアはPORTOで配信しました。すると、例えばフリークエンシーを3回と想定したとき、同じメディアに3回接するより、異なるメディアに1回ずつの合計3回接した方がブランドリフトや認知が向上すると、効果測定から分かったのです。
こうした検証ができるのも統合プラットフォームだからこそ。従来のように、施策(実施メディア)によってエージェンシーが異なると、レポートも統一されておらず、メディア横断の検証をするのは難しいんです。また、広告予算においては媒体ごとで決められているパターンが多いのですが、合算して戦略を立てる方が効果も高くなります。認知拡大を図るならテレビCMとデジタルサイネージ、理解を促進するならDOOHとデジタル動画など、クライアントの課題解決に最適なメディアの組み合わせや予算配分を実現しやすくなりますからね。
―ブランド認知の獲得を目的とするブランディング広告ですが、思った以上に、数値も効果を測る重要な要素なのですね。
吉田:確かに、ブランディング広告と対になるダイレクトレスポンス広告の方がコンバージョンでジャッジされるイメージが強いかと思います。しかし、ブランディング広告の広告主も決して数字は無視していません。ブランドリフトや行動変容が起きる理由を論理的に説明するためには数字が不可欠ですし、説得力も増します。
企業が広告に予算を投下する理由のほとんどが、自社サービスの売上向上のためだと思います。私たちも広告配信事業を展開している以上、クライアントのビジネスゴールにコミットする使命があります。だからこそ単にブランドリフトを高めるだけでなく、その先にある売上への貢献を見据えて施策を考えなければなりません。「この戦略(KPI)はKGIにヒットしているのか」という意識を持つことが、ブランディング広告にも重要だと思います。
その点、KPI(ブランドリフト)とKGI(売上向上)の相関を可視化出来た事例なども最近は出来てきました。
―電通グループのCARTA HDですが、PORTOも電通と連携することはありますか?
吉田:やはりグループ傘下に入っているので、プラットフォーム連携など、電通と協業する場面は少しずつ増えています。特に、電通グループに属するさまざまな組織やチームと、営業面で連携を図れたことは、多くの好例づくりにつながったと思います。
PORTOを立ち上げてからしばらくは、協業というと、デジタルマーケティングを手がける電通グループの電通デジタルと行うことがほとんどでした。しかし最近は加えて、マス系のメディア担当部門全般と協力することも増えています。例えば電通のラジオ部とは音声広告を、OOH局とはDOOHを販売し、それが好事例となるケースもあります。
初期の頃はPORTO側から協業を提案することが多かったのですが、実績の積み重ねに応じて、電通側からお声がけいただくことも増えてきました。両社のリソースをうまく活かしながら、シームレスな取り組みができると、互いに成長していけるのかなと思いますね。
―良い影響を与え合っているんですね。そもそも、PORTOが誕生したきっかけは何だったのでしょう?
吉田:2019年に行われた、CCIとVOYAGE GROUPの経営統合が一つのきっかけです。私はもともとCCIの前身であるサイバー・コミュニケーションズに在籍しており、「BEYOND X PMP」というサービスを立ち上げました。事業内容や事業概念は今のPORTOと大きく変わらないのですが、当時は他社開発のシステムを使って配信をしていました。そんなとき、開発に強いVOYAGE GROUPとの合併が決まり、さらにVOYAGE GROUPもブランド系プロダクトの開発を視野に入れていました。それならば、リソースやノウハウを一本化して新しい組織を作る方が合理的ですし、スピーディーな事業成長も見込めると考えたんです。
社名は、港を意味する「PORT」に、輪をイメージさせる「O」を組み合わせて「PORTO」にしました。デジタルマーケティング業界は様々なプレーヤーがいますが、色々な方々に気軽に寄っていただける、頼っていただける港のような存在で在りたいという想いを込めております。
―5月に開催されたAdvertising Week Asia 2022(以下、AWA)で登壇されたとのことですが、どのようなテーマについて話したのでしょうか?
吉田:まずは「コネクテッドTV(以下、CTV)」について、他の登壇者とディスカッションを交わしました。CTVとは、インターネット回線に接続されたテレビ端末のこと。急速な普及に伴い、テレビを通じてYouTubeやNetflixなどの動画コンテンツを視聴する方が増えており、広告業界では新たな広告チャネルとして注目を集めているんです。一方で、ターゲティングや効果検証の面で物足りなさを感じられる広告主も多く、うまく活用されていないのも事実としてあります。今後CTVへの注力を考えている立場から、メディアとしての可能性をメインにお話ししました。登壇後にリスナーと話してみると、やはり注目している方が多い印象で、手応えを感じることができました。
―CTVの他には、何を話されましたか?
吉田:「コンテキストターゲティングの実力とは?」というテーマのセミナーにも、スピーカーとして登壇しました。コンテキスト広告も、広告業界ではホットなトピックスですね。サードパーティCookieに規制が入ると、今まで問題なく実施していたターゲティング方法を使えなくなります。その点に危機感を持つ広告主は、Cookieの代替手段を真剣に探している。PORTOの代表ではなく、広告業界に身を置く一人として、俯瞰的な視点を持って、コンテキスト広告を活用したソリューションをお話しさせてもらいました。セミナー終了後、個別で勉強会や商談の要望が入っており、CTV同様注目度の高さを実感しました。お客様のリアルな反応を肌で感じられる、良い機会となりましたね。
―最後に、PORTOが社会に提供したい価値、会社として目指す姿を教えてください。
吉田:ビジネスの観点では、CTV広告の拡大を目指しながら、PORTOの特長である統合的な広告配信の実績を伸ばしていきたいです。正直、パーパスと言われるような社会的存在意義を語るのは、今の私たちには時期尚早だと思っています。ただ、プロダクトとしてスタートを切ったPORTOが2021年に組織化したことで、私も社員も少しずつ意識に変化が生じています。会社としての理念や意思が生まれ、プロダクトに“想い”が乗り始めた。その例が、岩手県が実施した、東日本大震災からの復興の歩みと復興支援への感謝を発信したプロジェクトへの参加です。取り組みに賛同した私たちは、岩手県が制作したポスターと動画を、PORTO経由で全国77カ所のDOOHに無料配信しました。
広告は、自分たちの想いを生活者に伝えたいという広告主の意思の表れです。そしてその想いを受け取った生活者が消費行動に移す際にも、そこには想いはある。広告主と生活者の想いをつなぐことが私たちの役割であり、そこに責任を持って仕事をしなければならないと、ひしひしと感じています。港に人が集まるように、PORTOに集まる想いを大事にしながら、プロダクトに磨きをかけたいと思います。