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来年のSNSはどうなる?Z世代研究会オーナーが明かす、2025年振り返り&2026年大予測

〜2026年のキーワードは「コミュニティ・ファースト」。信頼できる一次情報だけがファンベースを築く~

AIの急激な進化により生じた「AI疲れ」から「リアル」の価値が高まった2025年のSNS界隈。広告面ではAIの活用が進む一方で、Z世代がクローズドな空間へ急速に回帰するなど、劇的な変化を遂げた一年となりました。激変した2025年のSNSの動きを、株式会社CARTA ZEROのSNSコンサルタントであり、Z世代研究会のオーナーでもある新津 佑季が徹底解説します。X・Instagram・TikTokの最新トレンドを総括し、「広く浅い拡散」よりも、「狭く深い信頼」が重要になった理由を深掘り。その変化を受け、2026年のSNS戦略において重要になる「コミュニティ・ファースト」のポイントをお届けします。

新津 佑季

Yuki Niitsu

株式会社CARTA ZERO
メディア管轄 第1メディアビジネス局
Social AdTrim部

2021年、株式会社サイバー・コミュニケーションズ(現 株式会社CARTA ZERO)へ新卒入社。TikTokの広告領域やインフルエンサーアサインを中心に営業・ディレクション業務に携わる。 2023年より、SNSコンサルタントとしてオーガニック領域に就任。戦略立案から運用まで多岐にわたる業務を担当中。Z世代マーケティングの課題解決を提供するコンサルティングプロジェクト「Z世代研究会(通称:ゼトケン)」のオーナー。

2025年のSNSは、AIとリアルの二極化。
Z世代は「検索」と「コミュニケーション」での使い分けが定着

―2025年のSNS市場を総括するキーワードとして、一つ挙げるとしたら何でしょうか?

「AIとリアルの二極化」です。

2025年は、生成AIによって誰もが容易に高品質なクリエイティブを作成できるようになった一方で、ユーザーの間では、「AI疲れ」とも呼ばれる疲労感が生じました。これは、「どれが本物か?」というコンテンツの信憑性に対する疑念や、完璧すぎるコンテンツへの倦怠感となって現れています。実際、日本ではAIサービスの利便性を享受しつつも、約66%の利用者が「便利だが不安」と感じているという調査データ(※1)もあります。さらに、OpenAI社が開発した高性能な動画生成AIモデル「Sora 2」のリリース直後には、日本のアニメキャラクターなどの著作権を無視した無断生成問題も発生し、SNSに流れる情報への不信感をさらに深める要因となりました。

その反動として、作り込まれていないリアルな日常や人間味のある言葉への価値が相対的に高まりました。さらに、不特定多数に拡散される「おすすめフィード」などよりも、ダイレクトメッセージ(DM)やInstagramの親しい友人機能、BeRealといったクローズドなコミュニティでの深いコミュニケーションを重視する動きが顕著になったと感じています。

※1 出典:NEC「AI時代に変化する消費者意識調査2025」、2025年9月。

―新津さんは、「Z世代研究会」のオーナーですが、Z世代に限定してみると、SNSの使い方で大きな特徴や変化はありましたか?

Z世代の使い方として、「検索行動」と「コミュニケーション」の分離が完全に定着したと思います。具体的には、検索ではTikTokやInstagramの検索機能・AI要約を使い、友人とのコミュニケーションの場としては、クローズドな空間を重視する傾向が強まりました。 Z世代研究会で実施した「2025年版・世代別アンケート」でも、特にInstgramにおいて、ストーリーズへのリアクションからダイレクトメッセージ(DM)が始まるなど、「気軽にコミュニケーションが取れる点」が魅力という声が多数挙がっています。
また、行動としては、これまでの「広く浅く発信する(承認欲求)」から「狭く深く共有する(接続欲求)」へシフトしています。 他の世代が依然としてFacebookやXを情報のストック・拡散の場として使うのに対し、Z世代はSNSを“その瞬間”を共有するフロー型のツールとして利用しています。さらに、BeRealのように盛らないことがマナー化している点も、加工文化が根強い他世代との大きな違いです。

―先ほどBeRealなどの話も出ましたが、近年は新しいSNSが多数登場しています。これらの新興SNSは、具体的にどう使われているのでしょうか?

そうですね。近年では、Meta社のテキストSNS「Threads」や招待制コミュニティプラットフォーム「Discord」など、様々な特徴を持つサービスが登場しています。中でも特に、注目度の高かったBeRealとBlueskyは、それぞれ明確な役割を持って定着したと思います。

BeRealは、通知から2分以内にインカメラとアウトカメラを同時に使って撮影した写真を共有するSNSです。この機能と加工フィルターがないという特徴からリアルな瞬間が共有され、Z世代を中心としたインフラとして広く定着しています。ただし、利用は通知が来た時などに限られるため滞在時間は短く、あくまで「仲間の“今”を可視化するツール」としての役割にとどまっています。

Blueskyは、ユーザー自身がコミュニティのルールやアルゴリズムを選べるという特徴を持つテキストSNSです。この自由度の高さと透明性から、Xの仕様変更やアルゴリズムへの不満を持つ層、特にクリエイターやテック界隈などネットリテラシーの高い層の避難所兼、平穏な交流の場として普及しています。爆発的普及というよりは、健全なテキスト文化を好む層に定着しています。

ただ現場の感触として、どちらの媒体も広告やプロモーションにおける活用は、まだテスト段階の域を出ていないとみています。BeRealはその性質上、露骨な広告は嫌われるため、ブランド側が裏側を見せるようなオーガニック投稿での参入が主です。Blueskyは当初から広告を主要な収益源としない設計であり、一部の企業による「中の人」がファンと対話するファンマーケティング的な活用に留まっているのが現状です。

【X】“人間”による信頼情報に再注目/広告にもGrokが活用が進む

―ではここからは各媒体についてお聞きしていきます。まずは、Xからお伺いします。
Xのオーガニックのユーザートレンドと広告仕様について、特に注目すべき点は何でしょうか?

Xのオーガニックのユーザートレンドとしては、AIによる情報取得・処理の効率化と、ユーザーによる信頼できる情報源への回帰が、ともにみられました。まず、AIによる情報の取得・処理の効率化という点ではおすすめ精度の向上に加え、生成AIツール「Grok(グロック)」を活用した要約機能や投稿のファクトチェックを支援する機能の利用が増加しています。その一方で、AIを活用したインプレッション稼ぎのアカウントも増えています。この「インプゾンビ」への嫌悪感から、ユーザーは信頼性を求め始めました。その結果、誤情報やミスリードを防ぐために一般のユーザーが投稿に補足情報を付け加える機能である「コミュニティノート」を積極的にチェックしたり、自身で信頼できるアカウントをまとめたタイムライン「リスト機能」を利用したり、人間による信頼性の高い情報源へ回帰する傾向が強まっています。

広告仕様面では、オークションロジックがアップデートされた結果、CPMが安価になりパフォーマンスが改善されています。具体的には、ビジュアル要素・ランディングページスコア・コンバージョンデータといった新しい指標が導入されました。ビジュアル要素の判定にはGrokの評価が組み込まれており、詳細な判定基準は非公開ながら、この評価も備えた高スコアの広告が最も関連性の高いユーザーに表示されるようになっています。
また、Xの公式ポストでも紹介されていますが、プレロール広告を含めた動画広告のパフォーマンスが向上している傾向にあり、画像広告よりも動画クリエイティブの重要性が増しています。

【Instagram】クローズド回帰を色濃く反映/広告計測の精度向上も

―次にInstagramについてはいかがでしょうか。

Instagramでは、先に述べたZ世代の「クローズド回帰」というトレンドが、非常に強く反映されました。具体的には、通常のフィード投稿が減少した代わりに、親しい友人に限定したストーリーズ投稿やDM(ダイレクトメッセージ)機能へのアクティビティが集中しました。また、静止画が復権し、リール動画との使い分けが明確化されました。

使い分けとしては、リール動画はアルゴリズムによる拡散力が強いため、新規層への認知拡大の入口として機能しています。それに対して静止画は、プロフィールを訪れたユーザーにブランドの世界観や詳細情報を伝え、フォローの決め手となる信頼構築の役割を担っています。
また静止画の投稿方法として、日常の断片的な写真を一つのカルーセルとしてまとめて投稿する「Photo dump(フォトダンプ)」は、動画に疲れたユーザーに対し、作り込まないリアルな親近感を伝える手段として定着しました。

広告仕様面では、AIによる広告配信の効率化と高度な計測が次の段階へ進んでいます。
AIによるクリエイティブ生成・最適化ツールが標準装備され、制作と配信の効率が大幅に向上したことに加え、Threads広告のリリースも大きなトピックです。
特に注目すべきは、広告主がAIを戦略的に活用する手法の普及です。Meta広告独自の入札機能「バリュールール」を用いたAIハックが浸透し、人間が定義した利益率の高い顧客への入札を強化するような意図的な誘導が可能となりました。

さらに、広告がビジネス全体に与えた本当の貢献度を測る計測技術も深化しました。
インクリメンタルCV・ROAS最適化によって、広告の真の成果を測定し、その効果を最大化するよう最適化できるようになっています。また、LPV(ランディングページビュー)最適化やAmazonディープリンクでの外部誘導により、購買意欲の高いユーザーを外部サイトへスムーズに誘導可能です。直接購入に至らなくても、広告を見たことで検索行動に繋がったという貢献度を可視化するサーチリフトという手法も導入されています。

【TikTok】「検索」ニーズが拡大/フルファネル広告媒体としても成長

―では、最後にTikTokについてもお願いします。

これまでのTikTokは、若者向けの短尺動画共有アプリというイメージが強かったかもしれませんが、2025年は幅広い年齢の方が利用する多機能プラットフォームへと大きく変わりました。

オーガニックのユーザートレンドでは、動画の長尺化(1分以上)が進み、Vlogや解説系コンテンツなど、情報量の多いコンテンツが増加。この変化の結果、ユーザーはTikTokを単なるエンタメ消費ではなく、特定の情報や知識を得る場所として利用するようになり、プラットフォームは検索エンジンとしての用途を拡大しました。そのため投稿者側は、TikTok内でのSEO(キーワード最適化)を意識したキーワード選定が必須となっています。

広告仕様面では、プラットフォーム内での購買の完結と顧客育成の強化に焦点が当てられています。
まず、アプリ内の販売機能「TikTok Shop」がスタート。これにより、ユーザーは動画を視聴中にアプリを離れることなく、直接商品購入手続きに進めるようになり、ショッピング広告の体験が大幅に改善されました。
また、顧客アプローチの多角化も進んでいます。検索連動型広告の精度向上により、購入意欲の高い顕在層への効果的なアプローチが可能になりました。さらに、TikTok独自の測定・分析プラットフォーム「TikTok Market Scope」が導入され、ブランドへの関心を持ち始めた検討層を増やすための最適化メニュー「Consideration Ads」が利用可能となりました。
この進化は、TikTokが認知から顧客育成、購買に至るマーケティングファネルすべてをカバーするプラットフォームへと変貌したことを示しています。加えて、広告配信時に企業アカウントとTikTokアカウントの連携が必須となり、広告と通常コンテンツの体験の一体化がさらに進んでいます。

2026年のSNSはどうなる?担当者が備えるべき「コミュニティ・ファースト」

―2025年の各媒体の動向を踏まえ、2026年のSNSはどうなると予測しますか?オーガニック面、広告仕様面の2つの視点でお答えください。

まずオーガニックのユーザートレンドとしては、フォロワー数よりもファンとの信頼関係を最優先する「コミュニティ・ファースト」がキーワードになると思います。
AI生成コンテンツの氾濫により、ユーザーは信頼できる人、つまり友人や支持するインフルエンサーが推奨するものしか信じなくなります。そのため、フォロワー数(広さ)よりも、熱狂的なファンベース(深さ)を持つアカウントが強くなります。また、会員限定サブスクリプション型のコンテンツ閲覧がより一般的になると予測します。

広告仕様面では、クリエイティブの完全AI自動化が進み、コンテキストマッチが復権するとみています。 ターゲティング設定の手動調整はほぼ不要になり、AIがクリエイティブ生成から配信先選定までを行うようになります。また、Cookieレスの影響が極まることで、ユーザー属性ではなく今見ているコンテンツの内容に合わせたコンテキストターゲティングの精度が勝負になります。ただし、一部のプラットフォームでは、引き続き自社内で収集しているユーザー属性データを活用することで、高いターゲティング精度を維持すると予想されます。

―2026年に企業が注力すべき、あるいは動向を注視すべきプラットフォームはどれだとお考えですか?

Threads(スレッズ)とLinkedInの動向を特に注視すべきだと考えています。

Threadsは Xの代替として始まったものの、設計そのものが単なる情報発信だけではなく、ユーザー間の会話や交流、そして特定の話題でのコミュニティ形成を重視しています。また、Instagramとの連携強化により、「テキスト×ビジュアル」のハイブリッドな情報収集媒体として独自の地位を確立しつつあり、2026年は広告メニューの本格化が予想され、先行者利益が見込めます。
LinkedInは、2003年開始の老舗プラットフォームではありますが、B2Bだけでなく、ビジネスパーソンの実名制による信頼担保メディアとして、日本国内でも採用・広報面での重要度が再評価されるとみています。

―最後に、SNS担当者が2026年に向けて準備しておくべきことはありますか?

2026年を生き抜くために準備すべきは「一次情報の蓄積」と「AIリテラシーの向上」の2つです。

ユーザーは信頼できる、ここでしか手に入らない情報に価値を見出すため、一次情報こそが最強のコンテンツになります。AIはどれだけ進化しても、すでにある情報からしか学習できません。現場の裏側、開発秘話、社員の想いといった人間味のある一次情報は、熱狂的なファンベースを築くための核となり、有料会員限定のコンテンツとして収益化を図る上でも不可欠です。そのため、一次情報をしっかりと掘り起こせる体制を整備しておくべきだと考えています。
同時に、AIリテラシーの向上は必須です。一次情報を効率よくアウトプットするためにAIツールを使いこなすスキル、例えばプロンプトエンジニアリングなどは欠かせません。
これからのSNS戦略においては、「人間が素材を作り、AIが料理する」体制を整えることが大切だと思います。