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採用の進化

『カッコイイオトナを増やす』ことで世界を変える。新時代の採用・育成モデルをつくるサポーターズの矜持

国内最大級のエンジニア学生データベースを保有し、企業の新卒エンジニア採用を支援する株式会社サポーターズ。「カッコイイオトナを増やす」をビジョンに掲げ、“社会課題”と位置付けるエンジニア不足の解消に向けて、育成段階から支援を行っています。代表の楓博光は、学生起業を経て現在まで、HR領域を中心に活躍してきました。今回は楓に、サポーターズ創業の経緯や、事業の強みとこだわり、若手の活躍が目立つ会社の特徴について聞きました。

楓 博光

Hiroaki Kaede

株式会社サポーターズ 代表取締役

2012年4月にITエンジニアのキャリアを支援する株式会社サポーターズを創業。これまでに約1000社の新卒エンジニア採用支援、約7万人の学生エンジニアのキャリア支援を行うかたわら、「未来の ”技” 術者を ”育” てる」ことを目的とした、「技育プロジェクト」を通じてスキルアップ支援も行い、日本国内でますますニーズが高まるエンジニア職への育成やキャリア形成をサポートしている。
著書『ゼロからわかる新卒エンジニア採用マニュアル』

「自分はビル・ゲイツにはなれない」という挫折感が生んだ事業

―創業前について伺います。楓さんが「起業したい」と思うようになった背景には、原体験があるのでしょうか。

小学3年生くらいの頃、父に初めてプロ野球観戦に連れて行ってもらったときのことです。当時ファンだった中日ドラゴンズの試合を見に行きました。普通、小学生がプロの選手を見たら「かっこいい」「すごい」という感想になると思いますが、僕はその場で不思議な感情を抱きました。
フェンスを挟んで向こうにいる人たちは、その一挙手一投足が明日のニュースになり、もしかしたら歴史に名を残すことをしている人。一方でスタンドに座っている自分は何者でもなく、僕は今この席を立とうが、帰ろうが、記録にも残らないし、明日の新聞にも載らない。このことにショックを受け、向こう側にいない自分に焦りを感じました。
自分が世界を変える側に行く上で、当時憧れていたのがビル・ゲイツです。マイクロソフトを創業して、ITで世界を変えていくことを実際に行っているのを見て、めっちゃかっこいいなと。僕は幼いながらに「ビル・ゲイツみたいな人になる」と目標を掲げました。それが起業につながる原体験となっています。

―楓さんは大学在学中にも就活支援会社を起業されています。当時からHR領域にフォーカスし、その後も関わり続けているのはなぜでしょうか。

ビル・ゲイツを目指すという目標から、ITサービス開発をしたいと思った時期があった一方で、新卒1社目は広告会社だったため、「広告領域で世界を変える」と意気込んでいたりしました。しかし、働く中でだんだんと心が折れていってしまったのです。
IT領域では、とんでもない才能を持った人たちが、熱量と愛情を携えてどんどん新しいサービスを出し、しのぎを削っています。広告クリエイティブ領域でも同様でした。
自分より全然年下の学生が、自分とは次元の違うレベルで活躍している。このとき、自分がビル・ゲイツになるのは無理だと悟りました。しかし、HR領域で学生起業したことや人事経験を経て、人と人との出会いや成長のきっかけをつくることに対して想いを持っていた僕は「将来ビル・ゲイツになれる人を増やすことはできるかもしれない」という希望も抱きました。
自分はビル・ゲイツになれるような人を増やしていくことにコミットした方が、世界を変えられるのではないかと思ったのです。

今や社会課題となったエンジニア不足の根本解決に挑む

―サポーターズの事業内容と目的について教えてください。

エンジニアという職種は今、非IT系と言われる企業にも不可欠な職種となっており、求人倍率は10倍超(※)。需要が先行し、供給が追いついていません。1人のエンジニアを10社が奪い合っている状況なので、企業にとって最も採用が難しい職種になっています。さらに2030年に向けては、より需給バランスが崩れていくと想定されます。
エンジニア不足は、各社の採用課題と捉えられがちなのですが、僕は社会の課題であると感じています。国としてもデジタル庁の設立、プログラミング教育必修化、情報系学部の新設などに取り組んでいますが、需要に追いつくためには今以上のペースで人材を増やしていく必要があります。
そこでサポーターズでは、エンジニアになりたい人を企業と結びつけるマッチングに加え、そもそもエンジニアを目指す人、エンジニアになれる人を増やしていくことにしました。現在は「採用支援」と「育成」の2軸で、エンジニア不足という社会課題解決に対してアプローチしています。
(※)経済産業省「IT人材需給に関する調査」より

―マッチングを行う企業は多数ある中で、育成から行っている点は特徴的ですね。

育成をメインとした事業の1つが「技育プロジェクト」です。テックカンファレンスの「技育祭」や、ピッチコンテストである「技育展」など、様々な活動を通して、未来の技術者を育てる取り組みとなっています。
高校生や大学1年生など、まだ就職活動に至らない段階でスキルアップができる機会を与えることで、就活のタイミングになる頃には、即戦力の状態で企業様にご紹介していけるしくみになっています。
また、事業としては就活前の段階からユーザーデータベースが構築できるのも強みです。1学年に情報系の学生は約2万人と言われていますが、そのうち当社のユーザー登録は8000人程度。半数近い学生のデータを抱えているのは競合他社と比較しても圧倒的な優位性だと考えています。

―「技育プロジェクト」でどのような成果を挙げられていますか?

授業等でしかプログラミングを経験しておらず、将来への漠然とした不安を抱えていた大学1年生が、「技育プロジェクト」を通してスキルと経験を築き、就活に成功したという事例は多数出ています。
「技育プロジェクト」の中でハッカソンや勉強会、カンファレンスなどに何回も参加して鍛錬していくうちに、気づけば自分でものづくりができるエンジニアに成長し、IT企業へのインターンに行けるようになり、トップオブトップが行くような会社に就職できるまでになる。本人としても「サポーターズや技育プロジェクトがなかったら、全く違う人生になっていたと思う」と言っていただけることが増えてきました。

事業が傾きかけたことをチャンスと捉えた若手が今、会社を牽引する存在に

―創業から12年の中で最も大変だったことは何でしたか?

一番大きかったのはコロナ禍ですね。2020年の前半、多くの企業が一斉に採用活動をストップしました。我々はそれまでリアルイベントをメインとしてマッチングを進めるビジネスモデルだったので、それがすべて封じられてしまい、大打撃を受けたのです。それまでに積み上げてきたことがすべて否定されるような感覚になり、しばらく眠れなかったですね。
ただそれは同時に、事業を根本的に見直す機会にもなりました。リアルイベントができなくても、この後もエンジニア不足が続くことは自明です。そこで我々は、改めて「カッコイイオトナを増やす」というビジョンに立ち戻り、マッチング以外の、より根本的な活動を始めようと考えました。この過程で誕生したのが「技育プロジェクト」です。
2020年4月の緊急事態宣言が出る前には、新しい採用の形、新しいキャリアアップの形をつくると決め、イベントやプロジェクトはすべてオンライン化する方向へ舵を切っていました。とにかくスピーディーに意思決定をし、事業構造を変えていけたことが、会社としての大きなターニングポイントだったと捉えています。

―業績が悪化した際、若手の台頭があったと伺っています。具体的にご紹介いただけますか。

事業環境が悪くなると、組織面でもガタが来ます。当社でも「エンジニア領域に特化しているのが良くなかった」とか「イベントばかりするビジネスモデルが良くない」とか、事業のあり方に否定的な意見が出始めました。それをきっかけに退職者も出ました。
一方で、これをチャンスと捉える人もいました。「事業の前提が崩壊し、もう1度ゼロから作らざるを得ないことは会社としてもチャンスのはずだし、自分たちの経験としてもこんなことはそうそうない。だから、新しいことを始めましょうよ」と言ってくれた若手メンバーが何人も現れたのです。
「技育プロジェクト」に特に可能性を感じたメンバーは、「責任者をやりたいです」と手を挙げ、そのメンバーは今や執行役員になりました。また、その時期に成長していた人材紹介事業をもう1回作り直そうと頑張ってくれた若手は、今その事業の責任者になっています。
ピンチのときにそれをチャンスと捉えられる若手が一定数いて、結果その人たちが数年後の事業や会社を引っ張る存在になってきていることは喜ばしいなと思います。

―仲間同士で支え合う文化や社風について、改めて教えてください。

コロナになるまで、僕はサポーターズの代表として、全領域に手を出してきました。しかし事業構造の変化を余儀なくされたタイミングで、周りから「楓さんは楓さんの一番得意なことをしてほしい」と声をかけられ、役割分担をするようになりました。
全員がとにかく自分の強みにフォーカスをし、それぞれにできることを最大限やろうと。メンバーたちに「自分たちにできることは任せてください」と言われて、お互いの背中を預け合うようになれたことは、大きな変化だったと思います。
HR業界の他社からサポーターズに転職してきた人に「こんな前向きに人のキャリアに向き合っている会社はないよね」と言ってもらうことがあります。また、顧客である企業様からも「ここまで学生と真剣に向き合っている採用支援会社は見たことがない。ときには学生を叱り、ときには学生と一緒に泣く。だからこそ自分たちの採用も安心して任せられる」といったお言葉を頂くこともあります。HR業界は情報の非対称性をビジネスにすることが多いため、儲けることだけを考えれば、大なり小なり邪な気持ちが出てきてもおかしくありません。
そんな中で当社のメンバーは「カッコイイオトナを増やす」に対してブレることがありません。学生さんにも企業様にも前向きかつ誠実に向き合っていますし、彼らにとってプラスになることを素直に提案する。転職してきたメンバーから「この雰囲気で仕事ができるHR企業は見たことがない」と言われることが自慢ですね。

今後もエンジニアに限らず、「カッコイイオトナを増やす」

―会社・事業の現在地はどのあたりであると捉えていますか?

カッコイイオトナを増やし、世界を変え始めている実感を得られ始めています。というのも、創業して12年経ち、1年目にサービス提供した当時のユーザーたちが、今や業界を代表するようなWebサービス企業のCTOになるなど、それぞれ会社や業界でキーマンになり始めているのです。まだビル・ゲイツというほどではないかもしれませんが、自分にはできないようなすごいことをしていく人たちが何十人何百人と現れ始めている手ごたえがあります。
ただ一方で、サポーターズの現在地はまだ一丁目一番地という感覚もあります。今は新卒のマッチングしか扱っていませんし、業界としてもまだまだWeb系がほとんどですし、職種もエンジニアのみです。サポーターズが謳う「カッコイイオトナを増やす」はエンジニアに限定していないので、まだまだ横展開できる余地はあると考えています。

―今後の展望を教えてください。

HR領域は今後も不可欠で、絶対になくならないマーケットだと思っています。そこに対しては、CARTA HOLDINGSグループ全体としてもまだまだやれることがたくさんあるでしょう。
これまでサポーターズはエンジニア領域に注力してきましたが、先ほど言ったように横展開していくことはCARTA HOLDINGSにとってもプラスになってくると思います。
昨年は、デジタルマーケティング人材の育成に向けた取り組みをスタートし、今年は新卒にとどまらず、社会人向けのサービスをスタートする予定です。そのように、グループ会社を含めて新たな親和性や可能性を模索していければなと思っています。