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カルチャーの進化

CFOが全社員に送り続ける「手紙」その理由。【後編】

支えになる言葉との出会いが、私たちを強くする

CARTA HOLDINGSのCFOである永岡英則は、全社員にむけて毎週メッセージを発信しています。「主体性」や「リーダーシップ」「視野の広げ方」など、永岡自身がこれまで対峙し、考え、辿り着いたことを紡ぎだすストーリーに対して、社内では共感の輪が広がっています。
なぜこのようなメッセージを送るのか聞きました。

前編では数あるメッセージの中から抜粋し、「辛いときにいつも背中を押してくれる何気ない言葉」の回を紹介しました。
後編となる今回は、メッセージを書く背景と、永岡が考える「成長」について聞きました。

永岡 英則

Hidenori Nagaoka

株式会社CARTA HOLDINGS
取締役 執行役員 CFO

コーポレイトディレクションを経て、2000年にアクシブドットコム(のちのVOYAGE GROUP)入社。コーポレート部門全体を担う役割として、事業計画の策定や資金調達に取り組み、同年に取締役CFOに就任。2001年のサイバーエージェントの資本参加、2012年の同社からのMBO、2014年の東証マザース上場、のちの東証第一部への市場変更と、資本政策全般を実現に導く。2011年にはECナビベンチャーズ(のちのCARTA VENTURES)を設立し、未上場のインターネット関連ベンチャー企業への事業拡大支援や投資などを行う。
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合に伴いCARTA HOLDINGS取締役CFOに就任。
豊証券社外取締役。

経験や思考を共有し、共通の思考土台ができることでCARTAという組織が強くなる

ー永岡さんのBOARD MESSAGE(後述)からは、若い社員への愛が感じられます。どんな思いで書いていますか?

私はこのメッセージを「皆さんへの手紙」だと思って書いています。

CARTA HOLDINGSは、これまで経営統合も含め様々な変化を遂げており、アクシブドットコムやサイバー・コミュニケーションズの設立まで遡ると四半世紀が経ちます。私はもともと社内で直接接するメンバーには、様々な局面で「私ならこう考えます。なぜなら○○ですから」という会話をしてきましたし、ある程度はそれで伝えられるものもあったと思います。ただ、会社の規模が大きくなるにつれ、どうしてもそれは一部の人たちに限られてしまうようになります。
時を同じくして、去年12月のBOARD(=ボード。役員のこと。)合宿で「我々BOARDメンバーがどんなことを考え、何を大切にして、どういう判断をしているのか」を積極的に発信することが、社内全体の価値観の醸成に繋がるのではと話し合いました。これを機に、毎週交代で役員が全社にむけてSlackでメッセージを投稿する「CARTA BOARD MESSAGE」が始まりました。

私も気づけば50歳を過ぎました。これまでの経験の中で、メンバーにとって参考になるんじゃないかという話が蓄積されてきました。もちろんそれが「正解」というわけではありませんが、CARTA HOLDINGSには能力のある人たちが集まっているので、メッセージをきっかけに、気付いたり、ひらめたり、それは違うんじゃないかと意見の違いを見つけたりするヒントにしてほしい。そんな思いを込めて綴っています。

ーその内容はいつ考えていますか?

1週間に1本のペースで書いているので、「ずっと」考えている状態です(笑)。
月曜日の朝9時に配信しているため、理想としては金曜日の夜に原稿を仕上げ、セットすることを目指しています。空き時間に考えることが多いですが、今週は何を書こうかなぁと考えているうちに、だんだん追い込まれていくパターンです。文章の導入や言葉選びなどで悩むことも多いので、週末にずれ込んでしまうこともよくあります。子供の夏休みの宿題と同じですね。

―昔から文章を書くのが好きだったんですか?

まめな方ではないので、毎日日記をつけるといったことはできないんですが、振り返ってみると昔から「手紙」はたまに書いていましたね。旧友からも「あの時に君にもらった手紙が…」などと話をされることがあります。

ーBOARD MESSAGEのテーマはどのようにして選んでいますか?

その1週間の中で起こったことや、季節のこと、入社式や社内表彰などのイベントなどを切り口にして、伝えたいメッセージに繋げています。もちろん、これまでに考えたり話してきた内容をベースに用意しているタイトルリストもあります。
メンバーとの会話の中でテーマが見つかることもあります。今どんなことで悩んでいるかなどを聞くと「なるほど、この部分で迷うのか」「私ならこのように考えるかな」など、考えるきっかけになることも。去年12月にスタートして以来、常にBOARD MESSAGEのことを考えているので「良いネタ見つけた!」という気持ちになりますね(笑)。

社員の反応が原動力
どう感じ、どう受け止めるかは、それぞれの自由です

ー大変だと思いますが、それでも毎週欠かさず発信し続けているのはなぜですか?

BOARDメンバーで「誰かが週に1回は発信しよう」と決め、輪番制で運営しているので、本来は3か月に1度、順番が回ってくる程度なんですが、スタートして半年、私だけ勢い余ってウィークリーで書き始めてしまいました。このペースで始めてしまったので「ここで止めたら負けだ」という感覚が自分の中にありますね(笑)。
ただ、社員からの反応は大変励みになっています。「毎週読んでます」とか「楽しみにしています」と言ってもらえるので、自信につながっています。

読んだ人が、どう感じるか、どう受け止めるかは、本当にそれぞれで良いと考えています。ただし、どうしても「CFOから発せられる会社事情の話」として堅く受け取られがちです。ですので、いかに面白く伝えるかが私自身のチャレンジでもあります。

ー永岡さん自身のお気に入りの回はどれでしょうか?

毎回それなりに想いを込めて書いているので、一つ選べと言われると難しいのですが、強いて言えば前編で取り上げていただいた「Vol.10 辛いときにいつも背中を押してくれる何気ない言葉」です。
明治の俳人、正岡子規が、亡くなる2日前まで書き続けた随筆集『病床六尺』の中に出てきた言葉について綴ったものです。その言葉とは
「悟りといふ事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思つて居たのは間違ひで、悟りといふ事は如何なる場合にも平気で生きて居る事であつた。」
というものです。私は若い頃に出会って以来、この言葉が忘れられません。どんなにひどいことが起こっても「平気な顔して生きる」と決めています。

人間、生きていれば、仕事から離れても、本当にいろんなことが起きますよね。そんなとき平気な顔をして生きると決めてやっていくと、すごく重くのしかかっていることも少し軽く感じられるような気がするんです。

ー今まさに頑張っている若手社員にとっても、響く言葉ではないでしょうか。

そうですね、私はこの言葉に長年支えられてきましたが、言葉でなくても「支え」になるものを自分の中に作ることができると人間って結構強いと思うんです。どんなことが起きても簡単にはめげないといった耐性が強くなる。これはすごく大事なことだと考えています。そんな「支え」が皆さんの中に生まれるといいなと思って書いた回ですね。

時に失敗しながらチャレンジし
かけがえのない社会人人生を味わってほしい

ー永岡さんのBOARD MESSAGEでは「成長」がテーマのものも多いですね。
「成長」を一言で表すと何でしょうか?

これも難しい問いですね。「自分という小宇宙の拡張」でしょうか。自分が持つ世界観を広げること、知識、行動、コミュニケーションなど、能力の拡張も含め、できることや理解できることを増やすということが成長だと考えます。

社会で生きている以上、最後は全人格的な勝負になってきます。仕事のスキルだけでなく、人間としてのトータルの力が問われるようになります。そのためには、目的をひとつに限定するのではなく、広く色々なことに関心を持ち、その一方で目の前にあることを一生懸命やること。その繰り返しのあらゆることが自身の血となり肉となっていきます。

自分で考え、チャレンジし、結果を受け止め、またチャレンジし、時に失敗する。そうやって主体的に繰り返した結果、できることが大きくなり、世界が広がっていく。CARTAの皆さんに願うことは、ぜひ、どんどんチャレンジをして、世界が広がっていく社会人人生を味わってほしい。せっかく仕事をするなら、単に労働力がお金に変わるだけでなく、人間として仕事人として、自分のできることが広がっていくプライスレスな価値を作ってほしい。それが、CARTA HOLDINGSや縁のある人たちへの思いです。

少しでも私が書いた文章が役に立てば嬉しいです。