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カルチャーの進化

「人の想いで、人と未来の可能性を、拓いていく。」 ジェンダー平等の実現に取り組むリーダーに聞く

CARTA HOLDINGSは、ダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)※を推進しており、その一環として、女性エンパワメントプログラム「MAST」を始動しています。時を同じくして、電通グループのdentsu Japanもまた、同様のプログラム「TIME」を実施しています。今回、dentsu Japanチーフ・サステナビリティ・オフィサーの北風祐子さんと、CARTA HOLDINGSグループコミュニケーション本部 本部長兼D&I推進室 室長の梶原理加にインタビュー。プログラムが始まる前に抱えていた課題や、女性エンパワメントに必要なことを聞きました。

梶原 理加

Rika Kajiwara

株式会社CARTA HOLDINGS
執行役員 グループコミュニケーション本部長
D&I推進室 室長

2003年㈱サイバー・コミュニケーションズ(現CARTA HOLDINGS)入社。入社以来広告企画・セールス、データマネジメント事業の立ち上げ、広報など幅広い業務に従事。㈱CARTA HOLDINGSの社内外広報を担うグループコミュニケーション推進室 室長を経て、2023年1月執行役員 グループコミュニケーション本部長に就任。D&I推進室室長として、CARTA HOLDINGSグループのD&I推進を統括する。

北風 祐子

Yuko Kitakaze

株式会社 電通グループ
グループ・マネジメント・メンバー
dentsu Japan
チーフ・サステナビリティ・オフィサー

㈱電通に入社後、顧客企業のマーケティングや新規事業の戦略プランナーとして各種企画の立案と実施に携わる。同社のクリエーティブ局長を経て、2022年に㈱電通グループ 電通ジャパンネットワーク執行役員、初代Chief Diversity Officerに就任。2023年より㈱電通グループのグループ・マネジメント・メンバー、dentsu Japan チーフ・サステナビリティ・オフィサーとして、サステナビリティ戦略の策定と実行を統括する。

――プログラムの概要を教えてください。

北風:電通グループのダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(以下、DEI)※の目標は、「全員活躍による持続的な事業進化と社会変革」です。特に喫緊の課題となっているのが、ラインマネジメントや管理職におけるジェンダー平等の実現。そのために、女性社員がリーダーシップスキルを向上させ、将来的に管理職に就く道を考える人を増やすためのプログラムが「TIME」です。参加対象はdentsu Japan各社に在籍する女性社員で、全4回のセッションを行い、外部講師による体験学習を通して、自身の内発的ニーズの明確化やリーダーとなるための意識変容を促します。

梶原:「TIME」には、CARTAから3人が電通グループの一員として参加しています。それとは別にCARTA単独で進めているのが「MAST」です。10月から始動します。自分との向き合い方やアクションプランの立案、リーダーシップコーチングなどをテーマとしたプログラムを展開する予定です。私たちが考えるD&Iとは、能力や意欲を持っている社員が、社のミッションや方針に共感し、一人ひとりがそこに参画し、貢献できる土壌を作っていくことだと思っています。
私たちも女性管理職比率の目標数字を持っていますが、この数字を達成することが目的ではありません。ただ「女性だから」という理由で引き上げていくものでは決してなく、能力開発の機会や、成長の機会を意識的に作っていき、結果的に女性管理職比率もあがっていく構造にしたいと考えています。CARTAは性別に関わらず、人の成長を大切にしている会社です。公平に機会を作り、人の可能性を開花させていきたいです。自分の芯を明確にし、道を切り拓けるように。

――会社で抱えているジェンダーギャップにおける課題を教えてください。

北風:当グループには、管理職や意思決定層でのジェンダー平等がまだ達成されていない状況がありました。管理職以上のポジションは、圧倒的に男性の割合が多いのです。しかし男性中心の視点に固執していたら組織としての成長はありえません。もちろん単に女性を増やすだけでなく、視点の多様性を尊重することが重要ですが、まずは女性社員の割合を高めていくべきだと考えました。
ところが実際には、「管理職の役割を果たす自信がない」という女性社員がとても多いことがわかりました。女性管理職のロールモデルがいないせいだ、という人もいますが、果たして「ロールモデル」なんて存在するのでしょうか。一人ひとりが別の人格を持っているのに、丸ごとマネできるモデルなど、いるわけがありません。他の女性社員がリーダーとして成功したからといって、同じ方法が必ずしも自分に適するとは限りません。
結局、性別や年齢、ポジションに関係なく、成長して貢献できるようになるには、自分自身がどうなりたいか、何が強みで何が弱点か、自分と向き合うことが欠かせないのです。
会社として、その内省のプロセスをサポートしていこうと、TIMEで取り組むことにしました。

梶原:「リーダーになる自信がない」「キャリアビジョンが見えない」という声は、社内でもよく耳にします。当社の女性エンパワメントプログラムもそこに着目し、自信のなさを解消することや、自分の道を切り拓くマインドを作ることをサポートしていきたいと思ったのです。MASTには「帆柱」という意味がありますが、このプログラムを機に自分の芯を明確にし、その芯をベースにキャリアを考えていきましょうという想いがあります。

失敗を恐れず、まずは打席に立つ

――女性がリーダーになる自信を持てないのは、なぜだと思いますか?

梶原:要因の一つは、女性社員自身が無意識のうちに性別役割を当てはめてしまっていることです。例えばよく聞くのは、「プロ後輩」に徹してしまうという話。おのずと自分のポジションは補助的役割だと思い込む傾向があるようなのです。

北風:分かります。しかも、将来マネージャーへと昇格できる能力を持っている人ほど、優秀ゆえにプロ後輩を極めてしまい、最後の意思決定の部分は男性上司に委ねるケースが多いのです。
しかし自分の過去を振り返ってみると、自信がついた瞬間というのは、周りに頼れる人がおらず、誰からも手助けされない状況の中、自分自身の判断で問題を解決したり、目標を達成した時でした。そうした時にこそリーダーとしての自覚が生まれ、経験値になるのだと思います。結局は、自分にリーダーとしての経験が不足しているから、自信が持てないだけなんですよね。

梶原:リーダーになる自信を持つというのは、リーダーとして矢面に立つ勇気を持つことでもありますよね。誰かをサポートするより、勇気も意志も必要となる。そこに葛藤を抱えている女性が多いのではないでしょうか。

北風:正直、リーダーになることってそんなに大したことではなく、もっと気楽に考えていいと思うんです。会社すべてを背負っているわけでもないし、自分の代わりだっている。ただ、打席に立つか立たないかが、すごく大事なことなのです。元野球選手のイチローさんも打率ではなく、打数を目標にしている、と話していました。「(打率ではなく)ヒットを一本増やしたいとポジティブに考えるのです。そう思っていれば打席に立つのが楽しみになりますよね。僕は決して打率4割とは言わないんです。6割の失敗は許そう。いつもそう言っています」。この考え方が大切だと思います。

――すると、会社の雰囲気づくりも重要になってきそうですね。

梶原:そもそもこういうプログラムをやることが、ジェンダーギャップへ意識を向ける雰囲気づくりに繋がっていると思います。みんなが応援していこうという意識を持てるようになったらうれしいです。

北風:おっしゃる通りですね。私はDEIに携わって2年目ですが、1年目は「女性社員に特化したサポートをしていいのか」という迷いもありました。しかし海外では女性エンパワメントは当然の取り組みです。DEIのE、つまりEquity(公平性)の面でどうサポートするか考えていく必要があります。これは女性優遇でもなんでもなく、それだけこれまでの日本社会全体が女性の働く環境に見向きもしてこなかった証。今推進させていかないと、国として没落する。そのくらい大きな問題だと思います。

――TIMEもMASTも、「内省する」「自分の芯を作る」ということに軸を置いているプログラムなのですね。

梶原:社会人になって仕事に集中すると、論理的思考や情報整理の方法ばかりに重きを置いてしまって、自分の意見が何か分からなくなる時があります。要所で立ち返って、自分はどうしたいのか、何を目指しているのか、自分の価値は何か、考える必要があると思いました。CARTAからTIMEに参加した社員に感想を聞いてみたら、「自分の気持ちをさらけ出せた」と言っていました。揺るぎない芯を確立するために、自分の想いを明確にすることは、とてもいい訓練になりますよね。

北風:「どの部門でキャリアを積みたいか」「どんなスキルを習得したいか」など、皆さんキャリアの棚卸しはしているかもしれません。もちろんそれも必要なことですが、自分が何をすれば誰の役に立てるかを考えることが、仕事をするうえで重要です。私は、仕事の本質は「誰かの役に立つこと」だと思っています。きっと誰かのためを思って仕事している時が、一番いい仕事ができているし、自分もやりがいを感じているはず。そのためには、単に目に見えるスキルやキャリアを高めていけばいいわけではなく、自分に足りない点や弱みも含めて、とことん自分を見つめる必要があるのです。「ロールモデルがいないから」「自信がないから」で思考停止するのではなく、なぜそういう気持ちになるか突き詰めていくことが大切ですね。

梶原:そう考えると、自分の弱点を指摘してくれる仲間の存在はありがたいですよね。周りからのフィードバックなどで、足りない点を教えてもらえると、またそこから成長できると思えますから。

北風:役職に就くと、いよいよ誰も本音を言わなくなるので、私も自分にノーと言える人ばかり集める癖があります(笑)。自分の間違いを指摘されたときに、ポジティブに転化できれば、新しい自分を発見するきっかけになりますし、より思考を深めることができます。

負の感情に流されるのではなく、受け入れた先にいい未来がある

――これまでのキャリアで、ブレイクスルーになった出来事はありましたか?

梶原:私はまだブレイクスルーになっているとは言えず、ブレイクの真っ只中にいます(笑)。
D&Iを推進するのは壁にぶち当たることばかりです。私から見た正しさは、必ずしも誰かの正しさと同じとは限らないということを日々痛感しています。例えば、この「ジェンダーギャップ」についても伝えていくのがとても難しい。ジェンダーについて語るのは時として、とても勇気が必要です。でも、多様な意見が出ることを恐れず進んでいこうと思っています。波風を立てることを恐れて、やり過ごしてきた結果が今の状況に繋がっているのだと思います。日本においてジェンダーギャップ指数が低いことがよく話題になりますが、これは遠い過去からの積み重ねの結果なのです。未来を変えていくためには、現状に向き合うしかありません。ここから少しずつでもプロセスに変化を与え、結果を変えていくことに尽力したいと思っています。負の感情に流されるのではなく、プラスに変えていきたいです。

北風:私は比較的落ち込むことが少ないタイプなので、「このブレイクスルーを機に」ということではありませんが、リーダーの役割は、自分より仕事ができる人たちをいかにたくさん集めて、その人たちといかに素晴らしい目標を達成できるかだと認識しています。理想のリーダー像=チームメンバーの誰よりも優れている人だと思われがちですが、自分の足りない点を把握し、そこを補ってくれるメンバーと、どのようにゴールに向かうべきか考えることが大事なのです。自分だけの目標だと耐えられないかもしれませんが、チームみんなで描く夢のためなら忍耐強くなれるものだと思います。

――今後DEIや女性エンパワメントプログラムを推進することで、どのような組織を作りたいですか?

梶原:私はいつも、D&Iは手段、もしくはベースとなる考え方であって、目的は強い組織を作り、そこから事業成長に繋げていくことだと言っています。事業成長は社会への貢献が価値となり、形作られるものです。周囲の人と共存協働しながら事を成していくことを大事にしたいです。dentsu Japanの中でDEIボードというグループ各社のDEI推進リーダーの集まりを北風さんが組成してくださっていて、グループ各社の取組を知る機会があったり、時には悩みもシェアできる場を作ってくださっています。今回のこの対談もそんな繋がりがあって実現しています。D&Iは、一つの企業の取組だけで解決できることではなく、横の連携によりインパクトを出していくことができると思っています。
この先にどんな未来を作れるか、ワクワクしながら推進していきたいと思います。

北風:CARTA HOLDINGSをはじめ、電通グループの会社はみんな、工夫をしながらいい仕事をしている社員ばかりです。この工夫する力を集結すれば、組織はもっと良くなっていく。働きづらそうにしている人がいたらどうすればいいか、何に取り組めばいいか。そんな考えがどんどん波及していけば、組織から社会へ広がっていくと思います。その一端を担う存在として、DEIを前進させたいです。



D&I:Diversity(ダイバーシティ、多様性)・Inclusion(インクルージョン、包括性)の略称
DEI:Diversity(ダイバーシティ、多様性)・Equity(エクイティ、公平性)・Inclusion(インクルージョン、包括性)の略称

CARTA HOLDINGS | Diversity & Inclusion

dentsu Japan | DEI