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経営の進化

新卒2年目で経営会議へ。CTOとして「誰もが創造的な仕事に熱中できる」未来を作る

CARTA HOLDINGS(以下、CARTA)のCTO、鈴木健太。彼のキャリアは新卒2年目でグループ会社の経営会議メンバーに抜擢されたことから始まりました。激変する外部環境との対峙を通して生まれた「変化に強い組織」づくりへのこだわりは人一倍。「誰もが創造的な仕事に熱中できる」未来を目指すCTOの思考の源泉に迫ります。

鈴木 健太

Kenta Suzuki

株式会社CARTA HOLDINGS
執行役員CTO

2012年株式会社VOYAGE GROUP(現在の株式会社CARTA HOLDINGS)に新卒入社。ソフトウェアエンジニアとして、データ解析基盤およびWeb広告配信に関わる領域の開発に広く従事。2019年より、グループ会社である株式会社fluctにて取締役CTOを務め、fluct社における経営戦略、Web広告領域でのプロダクト戦略策定、技術方針作りおよびエンジニア組織マネジメントに携わる。2022年より株式会社CARTA HOLDINGS執行役員CTO。
共著『みんなのGo言語』(2016年 技術評論社)、『データ分析基盤構築入門』(2017年 技術評論社)。

CARTAのみんなが「創造的な仕事」に熱中できる未来をつくる

―CARTAのCTOとして、現在どんなことに取り組んでいますか?

攻めと守り、2つの領域を管掌しています。部署でいうと「CTO室(技術人事・広報・採用・Generative AI Lab)」と「ICT本部(IT基盤・セキュリティ・ヘルプデスク等)」です。
経営課題として3つのテーマに取り組んでいます。

一つ目は「守りの再構築」です。
事業の信頼性を担保するセキュリティやガバナンス体制を、CARTAの強みである「ボトムアップ文化」と「トップダウンの統制」を両立させながら構築するチャレンジです。

二つ目は「攻めの加速」です。
「AI前提時代」に対応するため、AI活用を一部の詳しい人材の「点」の取り組みから、全社的な「面」の取り組みへとスケールさせることが急務です。また、データドリブン経営の実現に向けた専門人材のケイパビリティ強化も進めています。

三つ目は「組織の進化」です。
会社のフェーズ変化に合わせて、創業期とは異なる「CARTAで働く魅力」を提示しなければなりません。事業を牽引できるハイレベル技術人材を惹きつけ、活躍し続けてもらうための採用とリテンションの施策を推進します。

これら3つの課題解決の先に見据えているのは、CARTAで働くすべての人がAIなどのテクノロジーを当たり前に使いこなしている状態。それは「誰もが創造的な仕事に熱中できる」未来です。

早期抜擢でもらえた機会が今の自分をつくった

―鈴木さんは新卒入社10年目にしてCARTA HOLDINGSのCTOに就任されました。このスピード就任につながった、ご自身のキャリアのハイライトとなる経験を教えてください。

最も大きな影響を受けたのは、新卒で入社して新規事業の立ち上げに携わった経験です。グループ会社の株式会社adingo(現 株式会社fluct、以下 fluct)でアドテクノロジー事業を立ち上げるにあたり、広告データを処理・加工する仕組みをゼロから構築する経験をしました。

入社した2012年当時はデータエンジニアリングという言葉も出始めた頃で、クラウド基盤の活用も黎明期でした。クラウドネイティブな基盤の上で右も左もわからない中、自分で調べ、組み上げ、失敗し、また作り直す。その毎日が、ソフトウェアエンジニアとしての基礎力を圧倒的に高めてくれました。

同時に当時のエンジニアの先輩方が、実務と並行してコンピューターサイエンスの古典的な知識をインプットする機会も作ってくれました。

この2012年から2014年頃の時期に「最先端の技術であるクラウドへの挑戦」と「アカデミックな基礎(コンピューターサイエンス)の学習」を同時に、猛烈なスピードでインプットできた経験が、今の自分の基盤になっています。

ただ、それ以上に大きかったと感じているのが、当時事業責任者だった古谷に抜擢されたことです。
私は新卒2年目の1月に、fluctのボード(経営会議)メンバーに加わりました。当初その場で交わされる会話はまったく理解できませんでした。

しかし、理解できないなりにその場にいることで、だんだんと経営の視点や事業の動き方がわかってくる。私に「とりあえず学んでおくように」という先行投資として、意図的にそうした「情報に触れる機会」を作ってくれていたのだと思います。あとはセルフモチベーションで勝手に学んでいくだろう、という信頼があったのかもしれません。

技術だけを追いかけていた自分に「事業を創るエンジニア」としての視点を与え、そちらの方向に導いてくれた。この早期の抜擢と機会提供がなければ、今の自分はなかったと断言できます。

“身体感覚”を大切にするのは、どんなときでも経営判断を下すため

― 開発の現場職での仕事からCTOという経営層になり、一番変わったことは何ですか

マネジメントの役割を担う時間が長くなるにつれて、失われていくものがあります。それは、技術に直接触れて何かを作ることに使える時間。つまり、エンジニアとしての「身体感覚」を養う時間です。

ものを作る時、私たちは「こういう仕組みが役に立ちそうだ」とイメージします。何かを実現するためにどのクラウドサービスを使うか、どのAIモデルを選ぶか、どの言語で実装するか。選択肢は無数にあります。もちろん、AIに聞いたり検索したりすれば情報は出てきます。
しかし、実際に作っている時はもっと身体的な感覚で、課題に向き合いながら反射的に手を動かし、試行錯誤のループに入っている。その時間が減ることは私にとって大きな損失です。

CARTAのCTOである以上、どんなときも経営判断が下せなければいけません。そのためにも、この「身体感覚」のアップデートは不可欠だからです。

― 「身体感覚」を維持するために、意識的に行っていることはありますか?

例えば、新しいライブラリやクラウドの機能が出たら、30分でも1時間でもチュートリアルを動かし、自分で触ってみる。私はこれを「水通し」と呼んでいますが、一度でも水通しした経験はただドキュメントを「読んだだけ」の知識とはまったく質が違います。

CARTAの経営陣や事業責任者たちは、ハイコンテキストな内容をトップスピードで議論し意思決定していきます。「調べてから回答します」では遅い。その10分間で意思決定できるかどうかが会社の命運を左右します。技術のスペシャリストとして、経営メンバーの一人として、精度の高い即答を毎日どの瞬間でも求められます。
触ったことのない技術について聞かれた時、AIに聞いて答えるだけでは身体感覚抜きの誰でも答えられる内容になってしまいます。そこに私自身の存在価値はありません。答えられない事があるとすごく悔しいんです。

もちろん、世の中のすべての技術に触れることは不可能です。ですから、意識的に「CARTAがこれから使うであろう技術」と「CARTA社内で今使われている技術」の2つに絞ってキャッチアップしています。

「水通し」のやり方もあれこれ試しています。個人契約できないツールなどは、実際にその技術に触れているエンジニアに「画面を見せてもらっていい?」と頼んで15分ほどペア作業のようにデモをしてもらいます。ほかにもオンライン動画を見たり、カンファレンスのブースに直接質問しに行ったりもします。

経営判断の場で、その技術が「なぜ選ばれているのか」「どういう特性があるのか」を自分の身体感覚として持っていること。それが、CARTA全体の技術戦略を考える上で絶対に欠かせないことだと考えています。

強烈な体験から見出した、「変化に強い組織」の条件

―キャリアの中で「きつかった」経験はないのでしょうか。

実は「きつかった」という記憶はあまりないんです。どの時期も全力疾走していましたから。ただ、fluctでの8年間は外部環境の変化という強烈な体験に向き合い続けた時期でした。

新しく生まれた産業はやがて社会と共生するための調整局面を迎えます。デジタルマーケティングの業界も同様で、特にプライバシー保護規制の強化を通じてより良いものに進化を遂げました。例えば、サードパーティクッキーの廃止やITP(Intelligent Tracking Prevention)、GDPR(General Data Protection Regulation)といったものです。
同時にこれらの出来事は、我々の事業モデルを根底から揺るがすものでもありました。

外部環境の変化に合わせて、ソフトウェアも組織も変わる必要があります。むしろ、そうしなければ生き残れない。その中で、「マーケットの変化に耐えうる、強い組織とは何か?」という問いに常に向き合い続けてきました。

―「変化に強い組織」とは、どのような組織でしょうか。

「全員が課題について考えるチーム」であることが、変化に強い組織の条件だと思います。それを実現するための要素は2つあると思います。

第一に「顧客の声をストレートに拾える構造」を持っていること。二次情報に頼る状況をなるべく減らして、現場のインサイトが経営陣に直接届くことが重要です。

第二にエンジニア、営業、PM、オペレーション担当といった役割にとらわれず、全員が「自分たちの未来にとって大事な要素」として課題を受け取り、徹底的に議論できること。

これらができないと、何が起きるか。
例えば営業担当が成功体験から脱却できず既存運用に新たな運用を積み重ねて仕組みが負債化したり。逆にプロダクト開発者が特定の人しか売れない複雑なものを生み出してしまったりします。実際にどちらも経験しました。

進化を生み出す仕組みをつくりたい

―まさに「進化」を体現されてきたと思いますが、鈴木さんが今の仕事に熱中できる理由は何ですか?

人が成長する姿やチームが熱中して何かを作り上げる姿を見るのが大好きだからです。
CARTAという会社は約180名のエンジニアと多様な事業という、素晴らしい資産を持っています。その中で私の仕事は「技術」「事業」「人」という資産を最適に結合させ、そのポテンシャルを最大化する仕組みを設計し実装することだと考えています。

― 最後に、鈴木さんご自身が生み出していきたい「進化」について教えてください。

CARTAのミッションは「The Evolution Factory」です。私がCTOとして生み出したいのは、技術と組織文化が両輪となって、進化を持続的に生み出し続ける「仕組み」そのものです。

CARTAで働く誰もが、AIやデータを使いこなし、挑戦できる。セキュリティが担保された共通基盤の上で、多様な事業が生まれ、育っていく。そして、皆が「共に創る」喜びに溢れ、自らの「創造的な仕事」によって世の中をより良くしていると実感できる。
そんな「進化の工房」を、技術と組織の力で実現すること。それが、私の生み出したい「進化」です。