Corporate Site

EVOLUTiON

事業の進化

生成AI×データ活用で拓く未来のイノベーション

DataCurrentが導く企業の効率向上と革新の実例

2024年のノーベル物理学賞と化学賞は、いずれもAI分野の研究者に授与されるなど、生成AIがこれまで以上に注目される存在になりました。研究分野のみならず、企業にとっても生成AIの活用は、業務革新と効率向上の切り札として注目されています。
 
データビジネスコンサルティングサービスを提供している株式会社DataCurrent(以下、DataCurrent)は、「生成AI×データ活用」を通じて、従来の業務プロセスを効率的に改善するための支援を行っています。今や、様々な業種で生成AIの導入によるメリットを享受できる時代です。本記事では、DataCurrentが提供した具体的な事例をもとに、企業がどのように生成AIを活用し、未来への一歩を踏み出しているのかを探ります。

多田 哲郎

Tetsuro Tada

株式会社DataCurrent
代表取締役社長

2005年サイバー・コミュニケーションズ(CCI:現CARTA COMMUNICATIONS)入社。社内外のシステム開発や各種マーケティングソリューションのジャパンエントリーなどを支援。その後トレーディングデスクや分析部門の立ち上げの後、データ活用を主とした顧客コンサルティング業務に従事。2019年6月に株式会社DataCurrent を設立。2021年1月に代表取締役社長に就任。

畠中 菜月

Natsuki Hatakenaka

株式会社DataCurrent
ビジネスコンサルティング本部

2019年サイバー・コミュニケーションズ(CCI:現CARTA COMMUNICATIONS)入社。入社後すぐに、総合代理店に出向し顧客課題解決のためのデータ分析から施策活用、レポーティング業務に従事。2022年よりDataCurrentにて、最新のAI/API検証や商品開発を行っている。 食品/飲料/日用品/保険/住宅関連など、様々な業種のクライアントに対して、CDP立ち上げ、分析、データマーケティング支援のプロジェクトマネージャー(PM)として貢献。

社員発のイノベーション 生成AIビジネス参入の舞台裏

―データビジネスを展開していたDataCurrentが、生成AIビジネスへの参入を決めた理由はなんでしょうか?

多田: DataCurrentは、2019年にサイバー・コミュニケーションズ(CCI:現CARTA COMMUNICATIONS)からデータ活用を推進する専門会社として分社化し設立されました。当社の強みは、顧客のデータ活用における戦略設計から開発、マーケティング運用支援までを一気通貫で提供できることにあります。

実は、当社の生成AIビジネスへの参入は、トップダウンではなく、メンバーからのボトムアップで決定しました。コンサルティングを行う中で、マーケティングの高度化や業務効率化に関する相談を多く受けており、それらの課題が生成AIを活用することで解決できることが分かってきました。その状況と並行して、メンバーによる自発的かつ能動的な技術調査が活発に行われ、社内でナレッジ共有が進み、サービス開発にまで至りました。そして、サービス開発を経て社内ツールの開発やハッカソンを重ねたことで、現在の対応力が培われてきました。

 

―本年、Google Cloudの生成AIパートナーに参画されましたが、その背景を教えてください。

多田:当社は2024年8月に、Google Cloud生成AI支援パートナーに認定されました。これは、Googleが提供する生成AI関連の技術やサービスを活用し、企業や組織がAIソリューションを導入・運用するのを支援するパートナー企業です。私たちパートナー企業は、専門的な知識と経験を駆使し、Googleの生成AI技術を効果的に活用することで、クライアントのビジネスニーズに応じてカスタマイズしたソリューションを提供します。
当社は、Google Cloudの生成AIパートナー全6つの領域のうち「未来のバックオフィス(組織のバックオフィスを AI 活用で自動化・効率化)」領域での支援実績が評価され、プログラムに参画しました。

当社が評価されたポイントは、早期に生成AIに関する技術領域の能力開発を進めていたこと、それが実案件での受注に繋がり、開発スピードも含めて顧客満足度も高かったことです。実際の案件としては、飲料メーカー様への業務効率化支援として3種類の外部/社内情報検索チャットボットの開発や、機器製造会社様へのコールセンターの音声分析・要約ダッシュボードの開発を行いました。

今回は、「未来のバックオフィス」領域で認定を受けましたが、今後は「マーケティング向け生成 AI」領域での認定も目指しています。

認定を受けたことにより、google社主催のイベント「生成AI相談会」に参加・登壇できるようになり、本年8月に開催されたイベントに初めて参加しました。

―Google Cloud主催イベント「生成 AI 相談会」では、どんなことを行うのですか。

畠中:「生成AI相談会」は、Google Cloudが招待した様々な業種の顧客企業15社、「未来のバックオフィス」パートナー企業から当社を含む4社が参加しました。

当社は、登壇と個別ブースでの相談会に参加しました。登壇では、当社がこれまでに行ってきた生成AI関連の支援実績や、提供しているサービスについてご紹介しました。ブースでは顧客企業と直接交流し、現状抱えている課題へのアプローチ方法や、当社がどのように支援できるかを、デモ画面も用いて詳しくご説明しました。

特にブースでの交流は、生成AI活用において直面している課題を企業から直接うかがえる良い機会となりました。例えば、生成AIを部分的に使用している企業が、精度向上やセキュリティが担保された安全な環境での利用方法について悩んでいること、自社のみでの社内浸透が難しいこと、また全社展開に際してセキュリティ面で懸念があるといった問題がありました。こうした個別企業の課題をうかがいながら、当社の過去の実績を踏まえたアプローチ方法をご提案し、今後の進め方として当社が伴走型で支援できる内容を提案させていただきました。

生成AIがもたらす業務革新と効率化

―これまで生成AI関連で相談を受けた内容・課題にはどんなものがあったのでしょうか。

畠中:特によく聞かれる課題は、社内ドキュメントやマニュアル、外部の情報検索がうまくいかず困っているというものです。情報を見つけたとしても、求める内容がどこに書かれているのかが分からず、結果としてIT部門などへの問い合わせが減らず、人件費がかかっているという声をよくうかがいます。

また、コールセンターやお問い合わせ対応、お客様アンケートなどで得られるリアルな顧客の声を十分にマーケティングに活用できていないという課題も多く見受けられます。この結果、業務の負荷が軽減されず、むしろ増加してしまうという状況も課題として挙げられます。

 

―それらの課題を生成AIで解決した事例を教えてください。

畠中:飲料メーカー様では、社内ドキュメントを検索して必要な情報を得るのが難しく、外部サイトから自社商品の市場価格情報を把握することが困難であるという課題があり、IT部門の工数が増大していました。そこで、社内用チャットボットの構築を行いました。このプロジェクトでは、特にセキュリティ面と検索結果の鮮度に対する懸念があり、将来的な拡張性も考慮して、Google社のVertexAIを採用しました。

セキュリティ面においては、多くの従業員が利用するため、会社の機密情報を検索してはいけない等といった注意点の周知に課題があり、従業員の理解度や情報到達度に不安がありました。また、検索結果の鮮度については、特定のAPIの利用により最新情報が2年前のものになってしまう懸念がありました。

これらの課題に対して、Googleソリューションを活用し、最新情報を網羅できる検索システムを構築しました。飲料メーカー様専用にカスタマイズすることで、機密情報を担保しながら検索結果をAIの学習に利用されない、プライベートな生成AIによる検索体験を実現できたことが大きなポイントです。その結果、リリース直後から月1,000件を超える検索が行われるサービスとなり、飲料メーカー様の業務効率化に貢献することができました。

<飲料メーカー様 社内チャットボットイメージ>

また、あるEC企業様では、レビューやアンケートなどのVoC(顧客の声)データを効果的にマーケティングに活用できていないという課題がありました。そこで、生成AIを活用し、これらのデータから重要なお客様の声を要約し、さらに顧客の意見がポジティブかネガティブかを判別できるダッシュボードを用意しました。これにより、細かくフィルターした状態でデータを可視化できるようになりました。その結果、以前は見逃していたお客様の声を15%多く補足できるようになり、その声を商品戦略およびマーケティングに活用できるようになりました。

さらに他の事例としては、メーカー様向けにコールセンターの音声ログをテキスト化し、生成AIを用いて要約を行い、過去の対応策をすぐに検索できるダッシュボードを構築しました。この他に、AIを活用した新人教育制度を支援するなど、様々な分野で生成AIを活用したサポートを行っています。

 

―DataCurrentだからこそ実現できたと考えることを教えてください。

畠中:当社には、個々のスキルだけでなく、日頃から培われたチームワークと、常に業界の動向に注意を払い、情報を共有する文化があります。これらは、Googleをはじめとするパートナー企業様との日々の連携によって、生成AIの最新情報を迅速に収集し、研究開発を行える当社の強みとなっています。

さらに、当社はバックオフィス支援だけにとどまらず、構築したサービスをマーケティングにも結び付け、施策から戦略に活かすアウトプットを考えた構築が可能です。普段から戦略策定、設計、データ環境整備、マーケティング実施まで伴走型で支援しているため、「構築して終わり」ではなく、一貫した設計ができると考えています。

 

―生成AIビジネスにおいて大変なことはなんでしょうか。

畠中: 生成AIは日々アップデートされるため、常に最新情報にアンテナを張ることが非常に重要です。実際、検索チャットボットの構築中に生成AIの新バージョンがリリースされるという事態が発生しました。その際、新旧バージョンの機能を徹底的に比較したところ、新バージョンの方が顧客にとって最適なモデルやソリューションを提供できると判断し、途中で設計を変更しました。

この案件でも、パートナー企業様との綿密なやり取りと、社内でのナレッジ共有を徹底し、全社一丸となって進めた結果、新バージョンのリリースからわずか1か月以内で本番環境に実装することができました。これは、当社の情報収集力とスピーディーな研究開発が成功の鍵だったと実感しています。

資格と技術で進化するDataCurrentの未来戦略

―DataCurrentでの直近の引き合いにはどのようなものがあるのでしょうか。

畠中:生成AIを活用して動画や画像コンテンツを作成し、お客様の嗜好に合わせた顧客体験の向上を検討している企業様が多く見られます。クリエイティブなコンテンツやキャンペーン用の文章を生成することは、顧客体験の向上につながるだけでなく、既存業務の効率化、つまりリソース負荷の軽減にも寄与するため、非常に多くのご相談をいただいています。

さらに、ロールプレイングシステムの構築による教育工数の削減や、最新のAPI機能を活用した研究開発の企画、アイデアソンの実施など、幅広い分野での引き合いがあります。

時折、お客様から「生成AIを活用して何か実現したい」という相談を受けることもありますが、私たちは、生成AIを手段の一つと捉え、生成AIを用いて何を達成したいのかが重要であると考えています。そのため、お客様との要件整理を丁寧に行い、実際にどのように活用するのかに至るまでの戦略を立てて提案することを心がけています。

 

―DataCurrentではGoogle Cloud認定資格の取得を進めていると伺いました。プロフェッショナル資格9個全て取得した方もいるとのことですが、なぜ資格取得を進めているのか教えてください。

多田:全社を挙げてGoogle Cloud認定資格の取得を進めた理由は2つあります。1つはGoogleとのパートナーシップをさらに強化し、当社に高度なスキルを持つエンジニアが多数在籍していることを示すためです。もう1つは、顧客の多様化するニーズに応えるためにはこのような幅広いスキルが必要であると判断したからです。
これまで当社はデータコンサルの一環としてデータ基盤構築を受託してきましたが、データ活用が進むにつれて、施策のための外部サービスとの連携やツール開発、データソースの品質改善のための開発といった隣接領域への対応が求められることが増えてきました。それらのニーズに応えるためには、データ関連だけでなく、ネットワークやセキュリティなどの周辺領域にも対応できる高度な知識・スキルが必要と判断しました。

そのため、2023年は全エンジニアがデータ分析のプロフェショナル資格を保有することを目標とし、2024年は全領域のプロフェッショナル資格を目指すこととしました。その成果として、本年11月、Google Cloud Japanが提供するアワードプログラムにおいて、当社のエンジニア3名が「Google Cloud Partner Top Engineer 2025」に選ばれました。

なお、「DataCurrent=Google Cloudパートナー」という印象が強いかもしれませんが、当社はGoogle Cloudに限らず、OpenAIなど他の技術も採用しており、ユースケースに応じて最適な技術選定を行っています。

今後も資格取得に限らず、多様なニーズに対応できるよう、技術開発力の強化を継続的に進めていく方針です。

 

―最後に、DataCurrentの計画・展望について、教えてください。

多田:2つあります。1つは、業務応用案件を増やし、生成AIのROI(投資収益率)を定量的に示すことです。まだPoC(概念実証)案件が多い状況ですが、今後は本格的な業務利用の案件を増やし、新しい価値の創出や業務効率化といった成果を定量的に証明していきたいと考えています。

2つ目は、マルチモーダルAI(※)への注力です。これまではテキストの要約や分類による業務効率化の実現が中心でしたが、音声や動画も含めた処理にも対応していきます。ユニークな取り組みとして、スポーツ用品メーカー様と共同してラケットスポーツにおけるショットのパフォーマンス向上を目的とした分析・検証にも着手しています。

※マルチモーダルAI:テキスト・画像・動画・音声など複数の異なる形式のモダリティ(データ様式)を統合して処理できるAI。人間の情報処理方法により近い形で、複雑な問題に対処することができる。

DataCurrentは、生成AIとデータ活用をかけあわせ、企業や組織が直面する多様な課題に対して革新的なソリューションを提供していきます。データを基盤にしたサービスを通じて、効率化と新たな価値創出を実現し、成長と革新を共に歩むパートナーであり続けたいと考えています。