テクノロジーの進化
マーケティング手法の最新情報をお届けするスペシャルカンファレンス「CCI UPDATE 2024」レポート
CARTA HOLDINGSの事業会社である株式会社CARTA COMMUNICATIONS(以下CCI)は、2024年5月16日(木)に「CCI UPDATE 2024」を開催しました。
2回目となる今年は、本社移転後の虎ノ門新オフィスのホールにて行われました。同内容はZoomウェビナーでも配信。日ごろからマーケティングに携わっている、メディア事業者、広告代理店、広告主など、約500名の方々にご参加いただきました。
※商標「UPDATE」は、LINEヤフー株式会社の許諾を受けて使用しています。
「CCI UPDATE」とは?
進展する社会のデジタル化を背景に、消費者とのコミュニケーション手法は常にUP DATEされ続けています。「CCI UPDATE」とは、デジタルソリューション企業として進化を続けるCCIが、その”UPDATE”をお届けするスペシャルカンファレンスです。広告主やマーケティングのスペシャリストに登壇いただき、デジタルを中心としたマーケティング手法の最新情報をお届けします。
カンファレンスは約2時間にわたって行われました。どのセッションもCCIがモデレーターを務め、登壇者様からのお話を伺いました。
【基調講演】デジタルを最強の武器にする方法
マーケティングの目的とは、ファンを創る顧客体験のデザイン
最初の基調講演では、株式会社igniteの笠松様から3つのテーマ「マーケティングの目的」「顧客を知るとは?」「インサイトとは?」にそってお話いただきました。
「マーケティングの目的は何か」という問いに対して、笠松様は「ファンを創る顧客体験のデザインであり、設計である。」と答えました。続けて、お客様の中にある本音をあぶりだし、お客様が共感するメッセージを考えて、タッチポイントを設計する。このステップを経て、最終目的であるファンをつくるための顧客体験をデザイン・設計をすることが出来るのだという考えを述べられました。
顕在化されたデータから、顧客の本音=インサイトを考える
デジタルマーケティング業界を取り巻く環境はここ10年で大きく変わってきています。そのうちの一つがデータドリブンマーケティングです。この急激な成長を肌で感じてきた目黒は、取り扱えるデータは増えたが、データに対する過剰な期待や過信も感じていると述べました。そのうえで、データから顧客の本音、すなわち「インサイト」を導き出すにはどうしたらよいかと、笠松様に質問します。笠松様いわく、いくつかの手法があり、そのうちの一つが「データを解釈する」ことだと話します。データはすでに顕在化されたものなので、そこにはインサイトはありません。しかしそのデータをみて、これはどうなんだろうと考えることでインサイトを発見することができるというのです。
デジタルには数字で顧客を知ることができるという強みがあります。しかしながら、知るだけでは効果的なマーケティングには繋がりません。知った先にどういうインサイトがあるのかを考えたり、掘り起こしたりする必要があるのです。そうして見つけたインサイトを起点にファンをつくるための活動をしていくのが重要だということを改めて実感できるお話でした。
“パーパス”視点の商品開発とデジタルマーケティング
企業の価値観が社員に根付いているからこそ誕生し、ヒットした「YOINED(ヨインド)」
2つ目のセッションでは、UCCジャパン株式会社の小坂様が登壇されました。テーマは「“パーパス”視点の商品開発とデジタルマーケティング」。「YOINED(ヨインド)」という同社の商品を題材に、お話しいただきました。
「YOINED(ヨインド)」は、昨年11月にUCC上島珈琲株式会社より日本初(※)の独自製法で生み出した飲まないコーヒーとして発売されました。UCC公式オンラインストアとUCC一部直販店舗(11店舗)での限定販売だったにもかかわらず、わずか5日間で完売しました。小坂様は、商品が誕生したきっかけを「YOINEDは、焙煎したコーヒー豆の味や香りを余すことなくすべて味わうことが出来ないか、という研究者の発想から生まれた商品だったんです。」と話します。
UCCグループは、コーヒー専門会社として、『より良い世界のために、コーヒーの力を解き放つ。』というパーパスをもっています。このパーパスに基づく価値観(バリュー)が5つあります。その中の1つである「コーヒーの価値探求」という価値観が、しっかりと社員に根付いているからこそ生まれた商品が「YOINED」であると小坂様は続けました。
(※)特許6849552号
コーヒー焙煎豆を粉砕し、その粉砕物と、別途コーヒー豆から抽出されたコーヒーオイル(食品中1%以上5%以下)、硬化油を混合・混錬する。これを成型して固めることで、コーヒー微粉砕物がコーヒーオイルや硬化油でコーティングされ、コーヒーの香りがしっかりと閉じ込められ、口に含んだときにコーヒーの香りが溢れ出す食品を製造する技術。
ユーザーの視点に立ちながら、商品を通して企業の価値を伝えていく
「YOINED」のプロジェクトは、マーケティングチームや研究員含め、組織横断型の体制で構築されています。『余韻』というワーディングも、社内イノベーションセンターの研究員の雑談から生まれたものでした。マーケターだけが考えるマーケティングではなく、研究員の情熱も大切にしながら体験価値につなげることが大事だと話します。ここでもパーパス視点が取り入れられています。
小坂様は、「YOINED」の経験を通して、企業の価値やパーパスは商品を通じて伝わっていくことを実感したと話します。企業から一方的にメッセージを伝えるのではなく、ユーザーのベネフィットまで落とし込んだ形にする。そして、ユーザーが求めているものと一緒に、どういう企業の思いや、創意工夫があるのかを伝えることが大切だと話しました。そうしていくことで、徐々に企業の価値やパーパスというのは伝わっていくと話します。ユーザーの視点に立ちながら、商品を通して企業の価値を伝えていくというのは今後も課題として取り組みたいと、小坂様は語りました。
ロッテと考える「これからのデジタルマーケティングへの期待」
同じ「消費財」でも、商品によってマーケティングで重要視するポイントは変わる
3つ目のセッションでは、株式会社ロッテの古野様とANREAL STUDIO LTD.のオノダ様が登壇されました。最初に「このプログラムでは、何か結論付けるのではなく、発散していくような議論をしたい」と前置きをしたうえで、いくつかのテーマにそって進行していきました。
テーマのうち1つは、「同じ消費財でも瞬間的に購入されるものと、目的をもって購入されるものがあるなかで、マーケティングコミュニケーションはどう考えていくべきか?」という質問でした。
これに対して古野様は「消費財カテゴリによって、単価の幅や利用頻度、購入場所などが全然違います。また、機能面で選択されるものもあれば、弊社で扱っているお菓子やアイスのようなカテゴリに関しては、衝動的に手に取られやすいですし、”売り場で選ぶ楽しさ” というのも魅力のひとつだと思っています。こう考えていくと、商品によって重視するポイントは必然的に変わってきます。そこを理解した上で、マーケティングコミュニケーションを考えていかなければならないと思います。」と答えました。
本来追っていきたい指標を、今後どう追いかけていくのか
「デジタルマーケティングで追いかけていきたい指標」というテーマでは、オノダ様が感じている課題感について述べました。
オノダ様は「最近強く感じるのが、単体のメディア、プラットフォームだけでキャンペーンが完結するのがなくなってきたということです。しかし、複数のプラットフォームをまたいだ施策全体で、想起や認知、好意度が上がったのかどうかをみていくことは現状難しいです。また、そこで得られた指標を中間目標にして、売り上げとの相関を追っていきたいとも思っています。それが今はできない。本来は追っていきたい指標を追っていけないというのは、非常にジレンマに感じています。」と話します。
これは、すぐに解決するには難しい課題であると思います。しかし、セッションの冒頭で前置きした通り、この場で結論付けるのではなく、議論し、課題を共通認識することが重要です。セッションの最後に岸岡は「パートナーの皆さまと一緒に、この課題解決のために一緒に考えていきたいとCCIの代表として考えています。そして、真剣に向き合っていきたいなという風に思っています。」という思いを参加者の皆さまへ伝えました。
脱ネガティブイメージ!
Hondaと語る、N-BOXスロープが挑むイメージ戦略におけるセールスプロモーションとは?
介護はもちろん、趣味から日常使いまで、すべてができる福祉車両
最後のセッションは、本田技研工業株式会社の井上様、肥後様に登壇いただきました。お2人が所属している福祉事業課では、福祉車両の商品企画、宣伝、広報、販売施策を一貫して行っています。今回は「N-BOXスロープ」という福祉車両のプロモーションについてお話しいただきました。
福祉車両は、介護をスムーズに行いたい方や身体の不自由な方が、移動の自由と満足度を広げるためのクルマです。高齢化に伴い、被介護者の人口は年々増えています。しかし、福祉車両の市場は年々減少している状況です。そこには、福祉色に対する抵抗があると井上様は話します。いかにポジティブなイメージに転換できるのかが課題になっているのです。そこで「N-BOXスロープ」は標準車とほぼ変わらないデザインを取り入れています。介護のためのみではなく、趣味から日常使いまでこの1台でこなせる。それが「N-BOXスロープ」のコンセプトだと井上様は話しました。
長期的な間接コンバージョンの評価はデジタルに残された最後の課題
では、このコンセプトをどうプロモーションにつなげていったのか。肥後様は「限られた予算や条件の制約がある中で、どうしたら効率的に潜在層の方にきちんとメッセージを届けていけるだろうかを考えました。そこで、施策の1つして、長尺動画でメッセージをターゲットに届けることができ、かつ、高い視聴完了率のPremium Veiwをご提案いただき、実施することにしました。」と話しました。
Premium Veiwは、電通、電通デジタル、CCIの3社の取り組みで生まれた商品です。多彩なフォーマットや電通独自のデータを保有しているのが特徴です。
施策後の効果に関して尋ねると「施策実施後に効果を感じる部分はあります。しかし、同時に複数施策を展開しているので、正直Premium Veiwがその売上台数に直結しているのかまではわかりません。そこが課題だとも思っています。」と答えました。これについて、CCI側もまったく同じ課題を感じていると同意します。
高額商品や耐久消費財といった検討期間が長い商品に関して、長期的な間接コンバージョンを含めてどう評価していくのかはデジタルに残された最後の課題です。そして、今後はそういったデータの不透明さをいかにクライアントが保有しているファースト・パーティー・データで補っていく取り組みが重要になってきます。
来たるクッキーレス時代の対応を考えさせられる内容でした。
閉会のご挨拶
最後は、CCI取締役執行役員 兼 メディア・ソリューション領域担当の岸岡より閉会の挨拶です。
「本日はありがとうございました。CCIという会社は、我々が単独で成長していくというよりは、パートナー様と一緒に成長していく。パートナー皆さまの成長が我々の成長だという風に思っております。特にこのデジタルマーケティングの業界は移り変わりが激しいものです。色々な施策を打っては改善し、もしくはスピーディーにやめる選択をする。そういうことを繰り返していかなければいけない業界だという風に思っております。そんな世界観の中で、我々は、パートナー皆さまの課題解決のために、マーケティング、ソリューション、サービス、スタッフを揃え、しっかり事業コミットをしていきたいという風に考えております。是非、皆さまの課題感をお聞かせください。CCIはこの業界をより良くするために、今後も尽力していきます。本日は本当にありがとうございました。」(岸岡)
まとめ
カンファレンス後のアンケートでは、参加された方の半数以上が「満足した」と回答いただく結果となっております。また、「様々なパートナーのハブになっているCCIだからこその内容であった」「広告主様が抱えている課題やデジタルに対する考えが聞けた貴重な機会であった」というお声もいただきました。
今後もCCIは、進化を続けるデジタルソリューション企業として、皆さまに定期的に最新の情報をお伝えしていきます。