事業の進化
「ひとつひとつの出会いを大切に紡げば、良い結果が付いてくる」テレシー成長の立役者に聞く仕事の極意
何事も開拓する「ブルドーザーシップ」を体現。
川瀬智博
Tomohiro Kawase
株式会社テレシー
取締役COO
―まず、現在の業務内容を教えてください。
川瀬智博(以下、川瀬):COOとして統括に携わりつつ、現場にも深く関わっています。私の管轄は主に営業で、顧客のマーケティング課題を解決するためのチーム組成や、その先のビジネスプロデュースなどを担っています。これまでテレビスポットに長く携わっていたこともあり、放送局との折衝やプロジェクトに必要な専門領域の人材のアサイン・交渉など、現場的な動きも多いですね。プロジェクトによってウエイトをかけるポイントや重要要素が異なるので、その都度私の立ち位置も変わってきます。また事業戦略・営業戦略の立案・推進も役割の一つです。
―どのような流れでテレシーにジョインすることになったのでしょう?
川瀬:VOYAGE GROUP(現CARTA HD)と電通が共同で立ち上げた運用型テレビCMプラットフォームのプロジェクトに参画したことがきっかけです。このサービスは、プロジェクトの前からやりたいと考えていることでもありました。2014〜2016年にかけてスタートアップ企業が活性化し始め、ロングテール領域にフォーカスした戦略の需要も増えると思っていたんです。テレビCMを予算の大きい企業だけのものではなく、予算が少額の企業も使えるサービスにしたかった。他社では同様のサービスがリリースされ始め、気運が高まった頃、VOYAGE GROUPとの協業が始まりました。初めは電通側の人間としてデジタル広告との違いやサービスの方向性などを話していたのですが、事業をスケールさせるポジションとして白羽の矢が立ちました。2020年5月にテレシーの前身となるPORTO tvをリリースし、私は同年7月に正式にCARTA HDにジョインしました。
売上だけが目標ではない。顧客との信頼関係を築き、運も味方に
―入社後テレシーの成長に大きく貢献されたと聞きました。まず設立2年目で運用型テレビCM市場で売上高1位の結果を出せた要因は何だと考えていますか?
川瀬:顧客への付加価値の追求に取り組んでいたら自然と売上が付いてきたという感覚なんです。
私自身、売上だけを目標にするタイプではありません。では何を目標にしているかというと、あらゆる可能性をつぶさないこと。つながりや出会いを大切にし、顧客の期待を裏切らずに応え続けることが仕事人としての責務だと思います。また、定期的に大きなお話があるため、どのタイミングで誰とつながるか、予算の範囲内でどう動くかということも考慮しています。顧客単価に関係なく、あらゆる顧客とも定期的に交流を持ち、信頼関係を築くこと。そしてクライアントとの出会いを大事にした結果、運も味方に付けられて、売上1位を獲得できたのだと思います。
―つながりや出会いを大事にするようになったきっかけは何ですか?
川瀬:ずっとやってきたサッカーで培われたマインドだと思います。サッカーは一人では決して成り立たないスポーツですし、根本には必ず仲間や対戦相手へのリスペクトがあります。90分間本気で戦い、良い試合をするためには、仲間に対して厳しい言葉をかけることもあります。それはビジネスに置き換えても同様です。良い結果を生み出すためには、つながりや出会いに感謝をして顧客やプロジェクトメンバーと向き合い、時には議論を交わし、妥協せずプロジェクトをやり遂げなければなりません。そうした過程を経て、良い結末を迎えた時の達成感は計り知れませんからね。
時には「嫌われる勇気」を持ってでも、顧客の利益追求に挑む
―2022年1月には社内表彰式「CARTA AWARD」にてMVPを獲得されたとのことですが、どのような点が評価に値したと感じていますか?
川瀬:自分にしかできない役割やミッションに尽力しているところでしょうか。私は、自分だからこそ生み出せる付加価値を作ることに重きを置いています。降ってくる案件をさばいて言われたことをやって誰かに渡す、というだけでは自分のいる意味はありません。
仕事は、「無理」「難しい」と言われたことや誰もができないと思っていることを、いかに突破するかが重要です。OKをもらうためにはどのような材料が必要なのか、どのようなロジックで組み立てて説明すればいいか、どの専門家の手を借りる必要があるか。あらゆる情報と手段を駆使して戦略を考え、ビジネスや事業を花開かせていくことが、私の使命だと思います。この心がけを貫いていると、いつの間にか良い仕事と巡り合えることもあります。実際、他社では難しいとされたアライアンス案件やプロジェクトも実現させました。そうした点が、CARTA AWARDでの評価の要素になったのかもしれません。
―テレシーが大事にしている価値観をスローガンにした「4Spirits」策定の経緯、また川瀬さんが思い入れのある言葉を教えてください。
川瀬:4Spiritsを作ったきっかけは、テレシーが本格的に拡大フェーズに入る前に、社員が共通で持てる価値観が必要だと感じたからです。最近は「多様性」を重視する会社が増えていますが、それはもともと同じ価値観を持つ社員が揃っているから、自分とは違う考えを受け入れるカルチャーが広がってきているのです。しかしテレシーのようなスタートアップは異なるバックグラウンドを持つ人の集合体であることがほとんどです。個人の持つ価値観がバラバラだからこそ、会社が共通の方針や方向性を示す必要があります。そこで、テレシーの社員数が30人程となり、さらなる拡大をしていこうという段階で、会社としてのカルチャーを定めることになりました。
全社員参加の合宿で決まった4Spiritsは、「真摯」「早くて速い」「ブルドーザーシップ」「必然をつくる」。特にブルドーザーシップという言葉が気に入っています。各メンバーの目指す組織像の認識合わせをする中で、「道なき道を行く」「周囲を巻き込む推進力を持つ」という志が共通していると分かりました。まさにブルドーザーのように突き進む。テレシーの組織づくりにとても重要な要素だと思います。
―川瀬さんが仕事をするうえで大事にしていることは何ですか?
川瀬:常日頃から、多角的な視点で物事をとらえるよう努めています。顧客の対面はもちろん、対面の方の上長や投資家、顧客の顧客、生活者、社会まで。さまざまな立ち位置から見て、どのような行動パターンやニーズがあるか分析し、それらを踏まえて最適なご提案をするよう心がけています。さらに顧客のサービスを通して、社会に付加価値を生み出せる俯瞰的な視点も大事です。
多角的な視点を持てる理由は、私が他者からの評価をまったく気にしないタイプだからだと思います。組織内での自分のポジションや立場、顧客との関係性を考慮しすぎて発言を控えたり、同調したりすると、結果的に良いものは作り出せません。本当に顧客やサービスの利益を最優先にするならば、時には嫌われ者になることも受け入れなければならない。一時的に批判されたとしても、人は必ずいつか理解してくれるものだと信じています。それは周囲との信頼関係に自信があるから。信頼関係が構築されていれば、相違する部分も受容できると思います。
CARTAや電通グループとシナジーを生み出し、社会に貢献できる存在に
―テレシーが注力していくべき点はどこだと思いますか?
川瀬:教育体制の構築はより注力すべき点だと思います。これまではリソースが限られていたため、私たちの背中を見せながら指導している状態でした。ですが4月からは新人にトレーナーをつけて、成長を促せる体制を作って運用する予定です。大きなプロジェクトに関われるチャンスもありますし、規模の小さいプロジェクトには若手をどんどんアサインし、先輩と二人三脚で業務をしたり、時には一人でプロデュースする経験も積んでもらうつもりです。いつまでも横に先輩がいる環境では成長できないので、壁にぶつかりながらプロジェクトをやり遂げる経験をしてほしいですね。もちろん私も含めて社内メンバーはいつでも相談に応じられる体制です。心理的安全性は高い環境だと思うので、新しく入社する方には安心していただきたいです。
―今後、よりCARTA HDを進化させるためには、何が必要だと思いますか? またテレシーをどのような組織にしていきたいですか?
川瀬:顧客の潜在的な要望に耳を傾けられると、自分たちも進化できるし、顧客のビジネス変革も実現できると思います。企業が根本的に抱えている課題や悩みを引き出して初めて、変革に向けた歩みを進めることができます。ありとあらゆる領域をカバーする電通グループだからこそ、このリソースを活用してあらゆることが実現可能です。その中でもCARTA HDは自由度が高く、デジタル領域を中心に広い領域を網羅しているので、CARTA HDの他の事業会社と連携するだけで、多くの顧客にとって役立てる存在になることができます。
そしてテレシーを今後さらに楽しい組織にしていきたいです。長年お付き合いを続けてきた顧客や昔からの仲間が、今も周りにたくさんいるため、その方たちに笑顔でいてほしい。出会いやつながりを大切にし、信頼関係を築くことで、自分自身もやりがいを感じられますし新しい楽しさを見いだせると思います。これからも自分が関わる人達が笑顔でいられるように努力していきたいです。