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EVOLUTiON

事業の進化

「デザインの力で、ユーザーを心酔させるプロダクトを作りたい」UXに優れたダッシュボードを提供し、広告収益最大化に貢献する

他社が見落としていた管理画面のUXに取り組み、驚異の高継続率を実現

インターネット広告の運用支援サービスを展開する株式会社fluctには、デザインの力で課題解決、事業推進に取り組む部署があります。XDC(Experience Design Center)です。fluctに関わるUX全体を下支えする組織として、他事業部と連携を図りながら、ユーザビリティの高いUI設計や改善に尽力しています。広告運用にかかる作業工数を削減する「DATA STRAP」も、XDCとのプロジェクトによってサービスクオリティの向上を実現したプロダクトの一つです。どのような課題に向き合い、デザインの力によってどのように解決したのか。XDCの野呂直樹とDATA STRAPの宮脇隆に話を聞きました。

野呂 直樹

Naoki Noro

株式会社fluct
XDC(Experience Design Center)
本部長

2014年VOYAGE GROUP(現CARTA HOLDINGS)中途入社。
2017年にfluctへ異動した後、XDCを立ち上げ本部長に就任。

宮脇 隆

Takashi Miyawaki

株式会社fluct
パブリッシャーグロース事業本部
DATASTRAP本部 副本部長

2016年VOYAGE GROUP(現CARTA HOLDINGS)中途入社。
広告運用効率化ツール「DATA STRAP」のプロダクト責任者を務める。

―まずはお二人の現在の仕事内容を教えてください。

宮脇隆(以下、宮脇):DATA STRAP本部の責任者を務めています。開発エンジニア6名、ビジネス職1名が所属し、DATA STRAPというプロダクトの営業から開発までトータルで担っている部署です。クライアントからの要望や市場動向を踏まえながら開発方針を決定し、プロダクトのブラッシュアップをしています。

野呂直樹(以下、野呂):fluctの中でUXデザイン全般の業務を担うXDCにて、デザイナー兼本部長を務めています。
具体的な業務内容を挙げると、例えば広告運用者に提供する管理画面のフルリニューアル。PVや広告売上など数値全体をチェックできるダッシュボードを、より見やすくより使いやすい形でレポーティングしていただけるよう、UXの観点から改善を試みています。また、DATA STRAPと連携して、デザインシステムの構築も遂行しました。
その他ロゴやコーポレートサイトの刷新時に生じるクリエイティブ制作にも携わっています。

―宮脇さんが担当されているDATA STRAPはどのようなプロダクトですか?

宮脇:DATA STRAPを一言で表すと、広告運用作業の効率化ツールです。fluctのクライアントである広告運用担当者様は、多ければ20、30の広告事業社と取引をしています。各広告の効果や売上を知るために不可欠なのがレポーティングですが、その作業には膨大な手間と時間がかかります。場合によっては1日がかりで集計作業をするという企業もいらっしゃいます。そうした課題を解決すべく、広告レポートを一元化し、計測・分析の自動化機能を備えたツールとして、2020年に誕生したのがDATA STRAPです。
作業時間の削減や収益改善点の可視化などを可能にし、広告運用の最適化に役立てていただいています。

―野呂さんが所属されているXDCが立ち上がった背景を教えてください。

野呂:競争の激しいインターネット広告業界では、「他社との差別化」が課題の一つとして取り上げられています。出稿媒体は基本的に同じ。新しい戦略や手法を編み出してもすぐ真似をされてしまう。しかし唯一、どの企業も着手しきれておらず、洗練されていない領域がUXだったのです。
特に先ほど話した管理画面は、必要な機能が継ぎ足しされていくばかり。広告運用者様は使い勝手が悪くても我慢して使っているという状況でした。他社と差別化を図るためには、クライアントにとって快適性の高いサービスへと改善することが重要ではないか。このように、社長の望月と企画を練りはじめたのがXDCの始まりです。

宮脇:クライアントと同様に社内でもレポーティング作業を行うため、社員からも管理画面に関するデザイン面や使用感の要望が野呂さんのもとに入っていましたよね。そうした意見がfluct全体の課題として挙がっていた記憶があります。

野呂:管理画面は社員もよく使うんです。だからよりユーザービリティの優れた画面へと改善できれば、社内にも効率化、コスト圧縮の面でメリットがある。初めは私が単独で業務を進めていたのですが、組織化をした方がいいということになり、「GOOD UX(良質な顧客体験)」を提供する部署として、DATA STRAPローンチと同時期にXDCがスタートしました。

―そのXDCとDATA STRAPの部署間にはどのような関わりがあるのでしょうか?

野呂:主にデザインシステム「INGRED UI」の開発にて、深く関わっていました。このINGRED UIを簡単に言うと、UIを構築するための材料が集約されたようなシステム。Webサイトの主要機能を有するボタンやチェックボックスが素材集としてコレクションされています。UIに自信のないエンジニアや非デザイナーも簡単にユーザーエクスペリエンスを考慮した画面を作ることができます。汎用性の高いシステムなため、現在はDATA STRAPの管理画面だけでなく、fluct内の他のプロダクトにも適用されています。
開発のきっかけは、fluctのデザイン改善を私一人だけで行うには、マンパワーの面から難しかったこと。システム化すれば誰もがUIを実装できるようになります。同じ時に、UXの重要性が高いサービスであるDATA STRAPが立ち上がったこともあり、宮脇さんと共に開発を進めることになったんです。

宮脇:実はDATA STRAPでは、デザインシステムを作る前段階から、非エンジニア・非デザイナーでも扱えるBIダッシュボードをテスト的に開発してクライアントに提供していたんです。広告運用者に使ってもらうことで、管理画面に望む機能や課題を吸い上げていました。

野呂:宮脇さんがテストシステムを構築してくれていたため、BIツールの範囲では実現できない機能や操作に需要があると分かりました。クライアントにご満足いただけるクオリティを叶えるためには、既存のシステムを使ったり外注したりするのではなく、独自のデザインシステムを作ることがベスト。そう判断し、本格的に始動することになったんです。

―DATA STRAPの開発を進める中でこだわった点はどこですか?

野呂:要所でこだわりはありますが、ダッシュボードのシンプルさは重視しました。宮脇さんがテストを実施したりDATA STRAP利用者のペルソナを設定したりする中で、管理画面に最も求められている要素は何か。そう考えた時、一つの画面にアクセスすれば欲しい情報を全て取得できるダッシュボードだと分かりました。宮脇さんの中にある構想を、いかにシンプルな形に落とし込むか。理想形がイメージできていたことで、開発は比較的スムーズに進んだように思います。

宮脇:もちろん紆余曲折もありました。やはりDATA STRAP自体、他社のシステムを使って成立しているビジネスでもあるので、全てを思い通りに作ることは難しかったですし、実現の可否を加味しながら理想とする最適解へと導いていく作業は大変でした。ただレポーティングも単純ではなくて、様々な数字が組み合わさってクライアントの求めているレポートが出来上がります。複雑性が高く切り口の多い広告運用の数字をどう表現すれば、広告収益のアップセルに貢献できるのか。そうした点を強く意識をして開発に臨みました。

―実際クライアントからはどのような評価が届いていますか?

宮脇:多くの方から好評をいただいています。広告運用者様の一番の使命は、サイトの収益最大化。自動集計だけではなく、自動集計した数字を分かりやすく可視化し、必要な情報をすぐに手に入れられるレポーティングを実現したことで、本来の目的である戦略立案に充てられる時間を増やせるようになりました。月額で費用を頂戴している以上、今後も広告収益の最大化にコミットしたいですね。

野呂:確か、継続率98%を誇っているんですよね?

宮脇:そうです。

野呂:凄い! これはとても驚異的な数字です。支持されている証がこうした数字に表れているのはXDCとしてもうれしい限りですね。

―デザインシステムの完成以降、XDCとDATA STRAPはどのように接点を持っているのでしょうか?

野呂:ある程度システムが形を成してからはINGRED UIによってデザインができるため、深く関わることは少なくなりました。ただ、適宜システムの改善やブラッシュアップは行っています。やはりクライアントの要望や課題に耳を傾け、それを反映させることはサービスにとって重要です。提供する側が一方的に「この仕様なら間違いない」と思って管理画面を構築するのはただの自己満足。それを提供した後も定期的にヒアリングをして、改善・改良を継続してこそ、Good UXが叶うのです。
最近私の強い要望で、DATA STRAP専任のカスタマーサクセスを設けました。クライアントに向き合って些細な声も吸い上げ、社内で検討を重ねて必要があれば実装する。そうした体制は、必須だと思ったんです。
サービスを通して良い体験をしていただくためにはユーザーの視点から何が必要か考えること。これが自分の使命です。例えばレポーティングの時間が短縮できたことで、早く帰宅ができて、家族との時間が増えた。これも一種のUXによる良質な顧客体験。表面的なデザインばかりにとらわれないよう心がけています。
うれしいことにDATA STRAPは、積極的にクライアントの声を拾おうとするチームであり、良いアイデアの実現に向けて自走できる人ばかり所属しているので、サービス自体もどんどん磨きをかけられると思います。

―今後、UXによって実現したいこと、進化させたいことはありますか?

野呂:私はXDCを立ち上げたときに掲げたミッションとバリューに、想いの丈を詰め込みました。ミッションは「ユーザーを心酔させるプロダクトを開発する」、バリューは「Effortless・Wow moments・Keep on improving」。この世界を実現することが、私の展望です。「苦労なく」という意味を持つEffortlessには、説明書や仕様書とにらめっこしなければ使えないシステムはなくしていきたいという想いを込めました。使用方法が分からないシステムはストレスが溜まり心が離れていってしまいます。思わず声を上げてしまう感動体験の提供、そして時代の変遷と共に変わりゆく最適解を追求し、改善し続けていくこと。それらを融合して初めて、心酔させるプロダクトが生まれる。そう信じて、今後もユーザー中心設計を軸に取り組んでいくつもりです。