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コロナ禍によって求められる戦略変更。サポーターズがイベントをすべてオンライン化させた舞台裏

培ってきたノウハウがもたらした、実現までの道のり

VOYAGE GROUP(以降「VOYAGE」)の100%子会社であり、就職活動支援サービスを展開する株式会社サポーターズは、新型コロナウイルス感染拡大防止による影響で、これまでオフラインで行っていた就活イベントのすべてをオンライン化しました。今回は、イベントのオンライン化をどう進めたか、その上で見えてきた課題や今後の展望について、サポーターズの代表である楓さんと、エンジニア採用支援事業本部マネージャーの田尻さんにインタビューしました。

楓 博光

Hiroaki Kaede

代表取締役

2007年慶應義塾大学経済学部卒。在学中に就活支援会社を創設し、WEBサービスや就活イベントを運営。大学卒業後は大手広告代理店を経て、2010年にVOYAGE GROUPに採用担当として入社し、無人島インターン「Island」などを手掛ける。社内新規事業コンテストをきっかけに2012年4月に株式会社サポーターズを創業。趣味はラーメン屋巡り。

田尻 孔徳

Yoshinori Tajiri

エンジニア採用支援事業本部マネージャー

2009年九州工業大学工学研究科修了。新卒で精密系メーカーにてエンジニアとして入社。のちに人材育成担当に従事。その後、2015年にサポーターズに学生支援担当として入社し、エンジニア向け面談イベントの企画・運営・システム構築などを手掛ける。現在はエンジニア採用支援事業本部マネージャーとして企業営業、学生支援全般を統括。趣味はボードゲーム。

ーーはじめに、サポーターズの具体的なサービス内容を教えてください。

楓博光(以下、楓):サポーターズは就活生向けの就活支援サービスを展開しています。事業内容は、リアルイベント、スカウトサービス、人材紹介の3つです。特徴は日本で唯一の交通費がもらえる就活サービスで、思いのほか交通費がかかる就活の障壁を取り除こうと、2012年から展開しています。利用者は地方やエンジニア職の学生が多く、企業さんもITベンチャー系を中心に500社程つかせていただいています。どうしても地方の学生には物理的な距離の問題や情報の差などが生じてしまうため、都会と地方の格差という課題感をもって事業に取り組んでいます。

これまでは我々が交通費を支払い、オフラインのイベントに参加してもらうという流れでイベントを年に200回ほど開催していました。それはそれで学生にとってとても良い機会になっていると言う自覚はありつつも、東京に来るための交通費以外の料金や、体力的な負担は解決できずにいると思っていました。

ーーそういった観点からもオンラインイベントの構想はあったのでしょうか

田尻孔徳(以下、田尻):そうですね。先ほどの話にもあったように、サポーターズには地方学生が多いという特色がありますし、より多くの学生に価値を届けたいという意味でも、オンラインというのは非常に目的に沿う施策、手段だと考えていました。そのため、実は2年程前からオンライン化へチャレンジをしていました。サポーターズ内にあるtech studioというエンジニア組織と適宜連携をとりながら、少しずつ準備を進めていたという状態でした。今回、図らずも強制的にオフライン開催ができなくなったのですが、これまでの事前準備があったことにより短期間でのオンライン化を実現することができました。

オンライン化によって、場所や形式にとらわれなくなったため我々としても、様々なイベントを打てるようになったという面はあります。事実、昨年に比べて、実施イベント数は倍近くまで伸びています。学生さんからしても、これまで宿泊をして参加しなくてはいけなかったものが、その日に自宅の部屋からパソコンを使って参加できるようになり、大きく負担が減ったという声もいただいています。結果的にですが、我々にとっても学生さんにとっても、やってみてすごく良かったなと思えています。

楓:今までは就活イベントがいきなりあって一発勝負のようなところがありました。オンラインを使えば気楽に事前に触れ合えるから、イベント前にしっかり学生と向き合う時間が作れるんです。地方の子たちにはなかなか届けられなかったコンテンツがオンライン化によって届けれるようになり、結果就活本番での学生たちとの向き合い方、スタートラインが変わった状態、進められた状態でオンラインイベントができるようになりました。

ーーオンライン化は具体的にはどのように進めていったのでしょうか。

田尻:2020年2月20日に、新型コロナウィルスの影響でサポーターズのリアルイベント中止が決まりました。そこから2週間でオフライン実施していたイベントのオンライン化を実現しました。

楓:そこはめちゃくちゃ早かったよね。オンライン化しようという意思決定自体は、ミーティング1回で決めきりました。ただうちの場合、企業さんと学生さんが1対1で面談する等、単純にイベントをそのままオンラインで実行できないものが多くありました。企業さんも学生さんも安全に安定して繋がってもらうためには、どう進めていけばいいのか何もわからないところからスタートし、それを2週間で完結させたのはなかなかのスピード感だったのではないかなと思います。

田尻:当初は参加する企業さんから不安な意見をいただくこともありました。その中でなるべくリアルと同じ状態を保ちつつ、オンラインでしかできない付加価値をつけながらイベントのクオリティを高めていきました。ここは2年前からオンラインの可能性を信じ、準備をしてきたことが2週間でのオンライン化実現につながったと考えています。

ーーなるほど。実際に進めていく上で課題となった部分を教えてください。

田尻:もっとも課題だったのはイベントを運営する際のオペレーションです。これまでオフライン開催をしていたイベントをオンライン化したわけですが、求められるオペレーションは今までとは全く違います。そのため、どのようにすれば参加する企業さん学生さんにとってわかりやすく、円滑な運営が出来るかをイベント運営チームメンバーとひたすら考えました。

オンラインでも緻密に連絡が取れるツールを導入したり、プレゼンテーションの予行練習会を実施するなど、これまで実施していなかった様々な取り組みを行いオンラインイベントの型を作ってきました。結果的に参加している企業の方から「オンラインイベントを実施している企業は沢山あるがサポーターズのイベントは運営がしっかりしていて他社とは一線を画している」という声もいただいています。
オペレーションの練度をあげることは非常に大変でしたが、今ではサポーターズの強みに代わっており、今後もイベント運営会社として参加企業、学生双方の声を聞きながらさらにブラッシュアップしていきたいです。

ーーオンライン化にあたって企業さんからはどのような反応がありましたか。

田尻:当初は懸念点を持つ企業さんは多かったです。ある企業さんからはオンラインでうまく面談ができる自信がないと相談をもらって、わざわざオフィスまで伺ってお話をしてきたこともありました。ただそのような企業さんも実際参加してみると、意外と良かったという声をいただけるようになりました。
例えば、オフラインだと周りがガヤガヤしている中で会話をするため、話が聞き取りづらいという課題がありましたが、オンラインであれば個別で会話ができるのでしっかり話ができるだとか、地方のオフィスの社員が参加しやすくなったとか、土日にわざわざ出社してもらう必要性がなくなったとか。企業さんからはおおむね好評で、むしろオンラインの方がいいという企業さんも結構出てきています。

楓:ここはすごい発見だったというか、基本的に我々も企業さんもオフラインの方がいいと思っていたのに「これオンラインの方がいいじゃん」という部分が少なからずあり、今後コロナが収束してもこのままでいいのではという説もでています。決め手はないけど、それくらいオンラインには手応えを感じているということです。

今まで会場がない、土日が足りない、という物理的な制約でできることが制限されていたのが、オンラインになることで解消されました。やれることの数と幅がすごく広がったという認識です。元々はオフラインでやろうとしていたイベントも、会場の都合で1,000人までしか入れなかったのが、オンライン化によって上限がなくなったので、より多くの人にリーチできるようになりました。開催も準備が格段に楽なので、ゲストも学生も参加できる幅はすごく広がったと思います。

ーーなるほど。一方で、その中で見えてきた新たな課題などはありましたか。

楓:物理的な制約は減ったものの、新たに見えてきた課題もあります。採用活動に関していうと、オフラインでないと伝わらない熱量や雰囲気は確実にあると思います。それこそオフィスを見学するとか、働いている人たちの雰囲気を見るとか、最後のところで採用担当者の情熱を伝えるという部分は、オンラインでは限界があるという認識です。それをどうオンラインで再現していくか、できるようにするかが課題になってくると思っています。そんな企業さんの課題をどう寄り添って解決していくかが今後の私たちの課題です。

また学生側の課題としては、オンラインで参加する人は増えるものの、通信環境やリテラシーによって結構な差がついてくると思っています。慣れてる人はいろんなイベントに参加して、オンラインで繋がりがどんどん増え、一方その環境がない人、リテラシーが高くない人はどんどんおいていかれてしまうのではないかと。今までは学校の友達の横の繋がりで勝手に情報交換されて啓蒙されていたのが、それができない今、自分で意識持って動かないと格差がより広がってしまうという懸念はあると思っていています。

ーーこれからの就職活動にはどのような動きが必要になってくると考えますか

楓:情報を持っている人、深く持っている人とそうでない人との差ができそうな気がしています。情報がオンラインでしかない中で自分で判断して探さなくてはならないので、人によっては浅い情報や、一回もその人に会ったこともない中で自分の進路を決めるということが起こり得ると思っています。
自分で情報を深く取る機会を作らないと偏った情報や、より浅い情報で自分の人生決まってしまうリスクが高くなる、より行動が求められるようになると思うんです。これからの就活は、数万人に対してオンライン配信が行われるという世界観も出てくると思います。そうなると1人あたりに割けられる時間が減り、1人あたりが得られる情報が少なくなってしまうと思います。

今まで何もしなくても友達から情報が入ってきていた関東の学生はさらに大変になると思います。学校のつながりがない中、気づくと周りに置いてかれているとか、圧倒的な情報量の差が付けられているような状況に陥りやすくなるのです。地方の子は、今までそうともしないと就活が成立しなかったけれど、関東の学生にはそのような習慣がないから苦労は増えると思います。

田尻:個人的に懸念しているのは、オンラインになって色々な情報を取りやすくなったことで、情報を得ることだけで満足してしまう学生が増えてしまうのではないかということです。情報は得られたモノをもとに、自分ごととして行動をして、アウトプットしてこそ身になるものです。情報だけ集めて頭でっかちにならず、自ら手を動かしていかないといけないと思うので、そこができるかどうかが重要だと思います。事実、サポーターズでも情報を得ることを目的としたセミナー型イベントは昨年の倍以上の申込をいただいてます。その中で、情報の海に溺れてしまう学生さんが増えるのではないでしょうか。得られた情報を自分の中で整理し取捨選択していく本当の意味での情報リテラシーが求められるのではないかと考えています。そういった部分でも気付きを与えられる、フォローが出来るような存在になれるよう我々も施策を練り上げていきたいと考えています。

ーー最後に、サポーターズとしての今後の展望について教えてください。

田尻:我々として大事にしていきたいことは必要な学生に価値あるキャリア選択の場を与えることだと考えています。今回、半ば強制的にイベントのオンライン化が進んだわけですが、結果として多くの学生さんから「情報が得たくても得られない状況の中、オンラインで情報が得られる機会を作っていただき本当に助かった」というお声をいただくことが出来ました。

現時点では、まだまだ新型コロナウイルスについて予断を許さない状況です。学生へのアンケートで分かったことですが、学生からもリアルでのイベントに関しては不安があるという声が過半数ありました。加えて、これまでも参加にあたり往復の移動時間がネックで参加できない学生なども多く、オンラインでのイベントはそういった学生に対する価値提供の可能性を広げられるものであると感じております。サポーターズとして、より多くの学生さんに機会を与えられるようオンラインイベントの可能性をさらに模索していきたいと考えております。

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