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デジタルマーケティングの港でありたい。ブランド向けプラットフォームPORTO誕生の裏側
いくつもあるプラットフォームの中からファーストチョイスとして選んでもらえるプロダクトを目指す
金子武比古
Takehiko Kaneko
Zucks代表取締役
吉濱 正太郎
Shotaro Yoshihama
PORTO開発責任者
吉田 大樹
Hiroki Yoshida
PORTOセールス責任者
ーーまず、「PORTO」とはどのようなサービスで、どんな強みがあるのでしょうか?
吉田大樹(以下、吉田):PORTOは、一言で言うとブランディングを重視する広告主が安心・安全にご出稿頂けるアドプラットフォームです。デジタル広告業界で課題視されているアドベリフィケーション関連に対応している、という事を大前提に、ディスプレイやインストリームなどの既存デジタルメディアのほか、オーディオやDOOHなどへの一括配信・レポーティングを行える点を強みにした唯一無二の存在になる事を目指しています。
ーー2019年4月にリリースされましたが、構想はいつ頃からあったのでしょうか?
吉濱正太郎(以下、吉濱):きっかけは2019年1月にVOYAGEとCCIが統合し、CARTAという大きな箱になったことです。VOYAGEとしてはブランド広告主向けのアドプラットフォームはずっと展開したかった事業なので、長年その分野に携わっており、知見のある吉田さんと一緒に新たにプロダクトを立ち上げることになりました。
金子武比古(以下、金子):VOYAGEではZucksという事業部でDSPを提供していたので、吉田さんがずっと担当してきたCCIの「BEYOND X PMP」とどのように区別すべきかはPMI※1で議題に挙がっていました。統合後も同じようなプロダクトを持ち続けてるのは互いにとって非効率。なので、統一しましょうという流れになったということです。
吉田:そうですね。僕は昨年まではBEYOND XとPORTOのどちらも兼務していたんですが、リソース的にPORTOだけに絞った方が、シェアを取りに行ける。今年の1月からVOYAGEに出向という形で、同じオフィスで仕事しています。
ーーブランド向けのプラットフォームを展開していく上で重要なことは何でしょうか?
吉濱:デマンド向けプラットフォームでは、KPIは購買やインストールといった明確な数値を設定する場合がほとんどですが、ブランド向けだとKPIを定めるのが難しいんです。エモーションに訴えかけたり、ブランドリフトを上げたり、可視化できない部分で効果を出すケースもある。だからDOOHやオーディオといったメディアを上手く活用して、戦略的に攻めていく必要があります。
金子:あとは「ブランドセーフティ」の価値観ですね。適切なメディアやコンテンツにしかるべき形で広告を出し、広告主の企業イメージやブランド価値を損なわないようにする。Web広告に対してはまだまだ獲得効率を求めている傾向にあるんですけど、PORTOはブランドセーフティにこだわったプロダクトとして打ち出していくつもりです。
吉田:プロダクトとしてももちろんそうですが、業界的にもだいぶ叫ばれるようになりましたね。
吉濱:確かに、認知を獲得したい企業はパフォーマンス主義ですけど、テレビCMを出していたクライアントだとブランドセーフティはかなり気にしていると感じます。
金子:そう、テレビCMなどのマス媒体を使っていた企業はブランドセーフの概念を元から持っている。彼らが安心してデジタル広告を出稿できるように、配信環境を整えていくことがPORTOの役割かなと思いますね。デジタル広告ってSNSやGoogleが圧倒的に多いので、それ以外にもある健全なメディアやプラットフォームに予算を割いてほしいです。
吉濱:それはありますね。放っておくとGoogleにすべて持っていかれちゃう(笑)。Googleとの差別化もプロダクトとしては意識しておくべきだと思ってます。
ーーセールスでも出稿先としてGoogleと比較されるケースは多いのでしょうか?
吉田:多いですね。ただそこはGoogleやYoutubeに出稿した場合とPORTOが持つ広告在庫に出稿した場合、後者の方がブランドセーフが守られるとしっかり説明することで理解していただけている感触はあります。クライアントからは「いいメディアが揃ってるね」とか「ベースに安心安全の概念があるね」といった声をいただけているので、僕らが大事にしているポリシーを理由に選んでもらっている。今はまだ規模は小さいですけど、方針としては間違っていないですし、一定の評価はもらえています。
物理的な距離がなくなったことで、溝も埋まっていった
ーーVOYAGEとCCIの2社共同でひとつのプロダクトを開発していくことにおいて、苦労した点や難しかった点はどんなところでしょうか?
吉濱:開発はVOYAGEで担当し、吉田さんからはビジネスサイドとして市場を鑑みた意見や要望を聞いていました。カルチャーも社内ルールも違うので、まずはそこのすり合わせからって感じでしたね。今は同じオフィスで仕事をしていますが、最初はオフィス自体が別の場所だったので物理的に距離があり、そこは課題でした。
金子:双方気を使っていたっていうのもあって、コミュニケーションが上手くとれていませんでしたね。「これはやってくれているだろう」とか「汲み取ってもらえただろう」とか認識のズレによってすれ違いが生じることもありました。次第に不信感に変わる、みたいな(笑)。
吉田:めちゃめちゃありましたね(笑)。そもそもプロダクトをリリースするまでのステップがVOYAGEとCCIで違ったんですよ。VOYAGE側はつくりながらリリースして都度改修をしていくトライアンドエラータイプ。一方CCIは完全な状態で世に出すタイプ。どちらが正解ではないけど、そういった前提の考え方が分からずにいたので苦労した部分はありました。
吉濱:そんな状態が、同じオフィスになるまで続きましたね。チャットだと伝わっていなかったニュアンスも、直接表情を見ながら話すことで徐々に通じ合っていきました。メンバーのパーソナリティやマインドを知れたのも大きいかもしれない。
金子:最近は、セールスサイドとプロダクトサイドがお互い歩み寄ってると感じますね。きっとオフィスが離れていたときは、セールス側のメンバーはプロダクトに対して不透明というか理解が行き届かない部分はあったと思うんですけど、今は「PORTOは自分のプロダクト」という意識を持つメンバーが増えてきたんじゃないかな。
吉濱:システムに関して聞きたいことがあるのに、開発の僕らが近くにいないから聞けないって状況もあったと思います。そういった意味でも、距離は大事だと思いました。
ーーなるほど。拠点統合は、現場のスタッフにとっても良い影響があったんですね。
吉田:正直VOYAGEのオフィスに来るってときは、みんな抵抗感ありましたけどね(笑)。オフィスが変わるってこともそうですけど、分かり合えない半年間を経ているので尚更。宗派の違う2人が結婚して同じ家に住む、みたいな。
吉濱:そこまで分かり合えてないとは思っていなかったな(笑)。
吉田:でもみんな今はすごく前向きになったし、モチベーションも上がっています。特に1月に開催されたVOYAGEの総会に参加したことは、刺激的だったようです。若手の子達は、自分と年齢の近いVOYAGEのメンバーがとんでもない売上高で表彰されている姿を見て、「悔しかった」とか「もっと上を目指したい」って話していました。
金子:吉田さんはCCIの人間でありながらも、中立の立場から双方の強みや実態を若手に示してくれていました。それによって相互理解が深まって、今の状況があるのかなと思います。
ーー「PORTO」のネーミングは吉田さんがされたとお聞きしました。そう名付けた背景には、どんな想いが込められているのでしょうか?
吉田:CARTAはポルトガル語で「海図」、VOYAGEは「航海」と、海に関連づいた名称なので、新プロダクトもそうしようと考えていました。「気軽に頼ってもらいたい」「デジタルマーケティングの港でありたい」という意味を込めて「PORT」。そこにVOYAGEとCCIの2社がひとつになって輪ができたから、ひとつになるという意味を込めて末尾にO(オー)を加えました。かっこいいでしょ(笑)?
吉濱:詩人ですね。
吉田:プロダクト名を名付けるとやっぱり愛着が持てます。このプロダクトでマーケットを取りに行くんだという気持ちで仕事に臨んでいます。
ーーWeb広告業界の中で、今後どういったポジションを目指していきたいですか?
吉濱:オンとオフの統合管理の価値を見出していけたら、唯一無二のプロダクトになれると思います。デジタルだけでなくアナログ広告も含め、予算管理やシミュレーションをPORTOひとつでできるようになるのが理想。そのためにはデバイスだけでなく、DOOHやオーディオをはじめメディアライブラリーを豊富にさせていかなければならないですし、既に外部パートナー企業と連携していますが、他社と協力をしながら機能強化をしていくつもりです。
吉田:セールスとしては、コンサルティングが重要になってくると考えています。吉濱さんが言うような強いプロダクトになっていけば、きっとスペックや機能だけで選んでもらえるようになるはず。そうなったときに僕たちは使い方を教えたり、広告の予算配分に関するアドバイスをしたり、コンサル的要素が求められると思うんです。クライアントが望むパフォーマンスにコミットできるセールス部隊でありたいですね。
金子:いくつもあるプラットフォームの中からファーストチョイスとして選んでもらえるプロダクトを目指しています。ブランド志向のクライアントはアドテクのリテラシーに波があるので、こちらから寄り添いながらバリューを提供していきたい。いくつも出稿した広告の効果を統合的に可視化できると、広告主にとっても価値あるプロダクトになっていくと思います。
※1:経営統合後の新組織体制や仕組みを構築するためのプロセス