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顧客から支持されるプロダクトを。ペット事業rakanuを子会社化した狙いとは
本当に犬のことが好きで真摯に向き合ってる人がいるから作れる
西園 正志
Masashi Nishizono
株式会社VOYAGE GROUP 取締役
湯川 健太
Kenta Yugawa
rakanu株式会社 代表取締役
ーーはじめにrakanuの事業内容について教えてください。
湯川:主力はペット事業で、収益はメディアのタイアップ広告と犬種特化型ECですね。2016年12月にWebメディア「FRENCH BULLDOG LIFE(フレンチブルドッグライフ)」を立ち上げました。その時にWebメディアでできることは全てやろうと決めて、3ヶ月後にEC、半年後には自社プロダクト、その数ヶ月後には保険を作りました。今Webメディアは「FRENCH BULLDOG LIFE」以外に「SHIBA-INU LIFE(柴犬ライフ)」「Retriever Life(レトリーバーライフ)」の計3媒体を運営しています。
ーーペット事業を始めた背景は何だったのでしょうか?
湯川:僕はフレンチブルドッグを3頭飼ってるんですけど、犬種に特化したメディアって面白いんじゃないかと。それで少し調べてみたら犬種に特化したメディアがなくて、じゃあ一度チャレンジしてみようと思いスタートしました。そしたらありがたいことに読者の皆様や広告主様からの評判が良く、他犬種へと横展開をしていったという感じです。
ーーメディアを作る上で大事にしていることはありますか?
湯川:その犬種を好きな人が作る、ということです。FRENCH BULLDOG LIFEを立ち上げた当初は、ライターさんも含めメンバーの100%がフレブルオーナーでした(笑)。僕たちは犬と暮らしているんじゃなくて、フレンチブルドッグと暮らしているんですよね。つまり、犬よりもっと先にある「犬種」についての情報を知りたいんです。これはペットと暮らすみなさんが思っていることだと思いますし、それは検索データでもしっかり顕在化しています。
犬って本当に複雑で、犬種によって性格や特徴が大きく異なりますし、さらに育った環境によっても変化します。だからこそ的確で密な情報を伝えていくためには、その犬種に詳しい人でなければならないと思うんです。愛犬と真摯に向き合っている方なら、犬種の特性を自ずと理解していきます。犬が好きはもちろんですが、その犬種を心の底から愛しているかどうか、これが良い情報を伝えられることと読者に愛されるカギとなると思っています。
西園:真摯に向き合っている人だからこそ作れるメディアだなと僕も感じています。今も犬種に特化したメディアをやっている会社はrakanu以外にないですよね。
湯川:そうですね。もちろん「犬」に関しての情報はWeb上にはたくさんあるのですが「犬種」でみると、正しい情報はほとんどないような気がしています。先ほどの話に関係しますが、犬ってチワワのような小さい犬もいればゴールデン・レトリーバーのような大きい犬までいますよね。でも「犬はこうトレーニングすると良いですよ」とか「犬のご飯はこれです」とか、犬種関係なしに全て同じくくりの「犬」として語られています。大きさも種類も違うのに同じ育て方でOKなわけがなくて、人間でいうなら0歳〜5歳の子供に対して全員同じものを食べなさい、と言っているのと同じなんです。オーナーさんが一番願っているのは、愛犬が元気で長生きしてくれることだと思いますから、そのためには犬種に合った的確な情報が欠かせないんですよね。こうしたところを最適化すべきだと思い、僕らは最初から獣医師さんやトレーナーさんたちに頼んでご飯や健康、体に関する記事をリリース前に100記事くらい作りました。
ーー事業が順調に伸びている中、完全子会社とすることを決めたのはなぜですか?
湯川:まず、僕らがこれまでずっとVC(※1)を入れずにやってきた理由として、その方が判断や決裁などスピード感を出せるのでは、というところでした。それで2年半の間で3犬種のメディアを作って思うのは、スピード感はありながらも、ここからさらに事業を拡大していくためには他犬種のメディアもやる必要があるし、タイアップ以外の収益モデルを作らないといけない。それを実現するには僕らだけでは5年、10年かかるなと。圧倒的なスピードで進めていくにはシナジーが高い会社と組んだ方が良いと考えたからです。
ーーなるほど。一方でVOYAGEとしてはどのような狙いがあったのでしょうか?
西園:rakanuに限らずVOYAGE、CARTAとして、本当に顧客から支持される自分たちのプロダクト・サービスをどれだけ持てるかが重要だと思っていて、かつそれを自分たちの手で顧客に届けられることをやっていかなければいけないと考えています。その中でrakanuが作るメディアには多くのユーザーがいるだけでなく、エンゲージメントもすごく高い。そして、広告主からも指名で出稿したいと言ってもらっている関係性がすごく良いなと思いました。あとは、コンテンツメディアに限らず食や健康、衣類など、人と同様の市場も成長が期待できるので、事業の拡張性もしやすいなというところです。
西園:そもそも、こういうメディアってなかなか作れないと思うんですよ。本当に犬のことが好きで真摯に向き合ってる人がいるから作れると思っていて、ただ単にC向けのサービスが得意でやってきた人が同じものを作ろうとしても、好きで真摯に向き合っている人たちには勝てないんじゃないかなと思います。なので、同じ未来を描けるのであれば仲間になってもらう選択肢がいいなと思っていて、今回に限らず今後もあらゆるカテゴリーのメディアを増やしていきたいですね。
ーー今後、どのような可能性が広がると考えますか?
湯川:シナジーを出していきたいと考えていた部分では「営業面」は1つあるので、そこは広げていきたいと思います。rakanuメンバーは業務委託の方を入れると50〜60人いるのですが、全員もの作りの編集をする人たちで、営業はほぼ僕ひとりなんです。ありがたいことにクライアントさんから引き合いはあるので本来ならばかなりグロースするのですが、応え切れてない部分があってそこはもっと改善していきたいですね。あとは、基本的にナショナルクライアントさんも紹介ではなく全て直でお取り組みしているので、例えばそうしたチャネル開拓や商流に対しても広がりがあるなと思っています。
PVを追うのではなくコンテンツに対するユーザーの反応を見る
ーーメディアを運営する上で決めている方針はありますか?
湯川:最初からPVだけを追わないというのは決めていました。ペットに限らず世の中のメディアがPV主義になっている一方で、本当にそれでいいのかという議論もよく出ています。僕らとしても、PVではなくサイトの滞在時間や記事の読了率、CTRが高いとか、ソーシャルで発信するといいねが何%つくとか、そうしたエンゲージメント軸で読者の反応を編集者が見ています。1個1個のコンテンツに反応してくれているかどうかを犬種別にしっかり見て伸ばしていきたいなというのは考えていますね。
西園:僕らとしても同じ考えです。VOYAGEがメディアを買収する時ってアドテク(※2)とシナジーがあるものを優先して選びそうとかあると思うのですが、全然そういう風には評価してないですし、そこではないんですよね。我々が持っているアドプロダクトを使ってもらうことはあるかもしれませんが、それはあくまでもサブでしかない。アドテクのプログラマティック広告(※3)を伸ばす目的であれば、例えばPVを伸ばす施策の優先順位をあげることをお願いすると思うのですが、それは思ってないですし、しなくていいですと伝えています。なので、当たり前なのですがユーザー・顧客に愛されるサービスを作るっていうのが重要で、そこをやっていきたいです。
湯川:実はVOYAGEに決めた理由で、メディアの方針に賛同してくれるというのは大きい部分でした。メディアの作り方や方針は変えるつもりがなかったので、「メディアは作りたいように作ってください。任せるし、口を挟みません。」と言ってもらえた時はすごく嬉しかったですね。
ーーすでに何か一緒に進めていることがあれば教えてください。
西園:VOYAGEの他事業部とという意味で言うと、ゲームメディア事業部の責任者とお互いメディア作りをどうやってきたかという情報交換をするとかはありましたね。あとはやっぱりペットは人間と同じビジネスが生まれるので、健康食品、EC、保険、服、旅行、それらを1つ1つやっていきたいです。
ーー1ヶ月ほど経過してみて、VOYAGEの印象はいかがですか?
湯川:そうですね、まず人がめちゃくちゃ温かいです。やっぱり人とか雰囲気って大事じゃないですか。ITベンチャーって聞くとイケイケなイメージがあったのですが、良い意味で落ち着いてるなと感じました(笑)。そして、みなさん優しいです。先日もVOYAGEの飲み会に呼んでいただいてrakanuメンバーで行ってきたのですが、みんなすぐ打ち解けてて。ずっと前から仲間だったんじゃないかというくらい仲良く楽しめました!
西園:そういえば子会社化してすぐVOYAGEのオフィスに移動してきてくれましたよね。
湯川:そうしないとシナジーが出ないなと思ったからです!元々編集者が多いので、事業をどう伸ばしていくかに関しては僕がメイン。それで遠隔でやっていると外注みたいになるじゃないですか(笑)。一緒になるからには西園さんも、他部署の方とも密に連携をしていかないと一緒になる意味がないなと思ったので、すぐ移動してきましたね。
ーー最後に、今後の意気込みを一言お願いします!
湯川:メディアを立ち上げる時、rakanuが作るメディアは何のためになるのか、メディアとしてどんなことができるのかというのを編集長と何時間も議論しました。そこで辿りついたのが、「愛犬を知る/知ろうとする」ことが豊かなペットライフに繋がるということです。FRENCH BULLDOG LIFEのキャッチコピーも『もっとキミを知りたいから。』としています。もちろん他犬種のメディアも同じ思いです。ペット業界ってまだ法整備が整っていないこともあって、グレーな部分も多いんです。なので、お金儲けのために本当は良くない商品を良いといったり、身体に悪いものも勧めたり……そういうところも正直言って多いです。
湯川:そこでオーナーさんが知識を得ていないと、手を出してしまうんですよね。犬のこと、犬種のこと、愛犬のこと、いろんな知識を持っていれば「これって本当に良い商品なんだっけ?」「これは本当にうちの子に合ってるの?」と疑問を抱くようになります。愛犬との暮らしも仕事と同じで、インプット・アウトプットを繰り返すことが大切だと思います。僕らのメディアはオーナーさんにインプットをしていただく場だと考えていますから、正しい情報を発信し続けることは、むしろ使命ですよね。
そうすることでオーナーさんのリテラシーが上がって、悪いものを買わなくなり、悪いビジネスがなくなっていくんじゃないかと思います。僕らが勧めている商品も、安心安全はもちろんのこと、実際に使ってみて良いと思ったものしか発信していません。これが信頼に繋がるのだと思っていますし、これからもブレずにやっていきたいですね。「ペット&オーナーファースト」が自然とメディアを成長させる!これを信じて、これからも頑張っていこうと思います。
※1:venture capitalの略。ベンチャー事業に資本を供給することを主たる業務とする組織・会社を指す
※2:広告ビジネスに用いられる各種情報技術の総称。インターネット広告やデジタルサイネージ、及びこれらの広告で用いられるデジタル技術を指す。
※3:運用型広告。インターネット広告で、閲覧者に対して最適化された広告を表示する手法の総称。