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不便さを感じたらそこはビジネスのチャンス。徹底的に自分ごと化することで見える世界
身を持って体験し、本来の課題がどこにあるかを見つけ出す
船方 翔馬
Syoma Funakata
ふるさと本舗 代表取締役
ーーVOYAGE GROUPに入社した決め手は何でしたか?
船方:一言でいうと、会社がやりたかったからです。高校を卒業して飲食店の店長として働いた後、貯めたお金でHAL東京に入学して4年間プログラミングの勉強をしました。そこでものの作り方を学びましたが、ものの作り方だけでは会社は作れないと思い、新規事業への挑戦ができる会社を探していたところVOYAGEに出会いました。入社してからは、新規で立ち上がった子会社で営業をやっていて、ひたすらテレアポをしてましたね。メンバーは3人で2年半ほどやっていたのですが、すごく楽しかったです。
その後、事業が閉じることになって、VOYAGE MARKETINGのアドマーケティング本部に異動し、自社メディアの広告営業をしていました。そしてまたいくつかの事業を経験した後、新規事業の創出を目的とする社内イベント「NEW GATE」に参加して、ふるさと納税のポータルサイト「ふるさと本舗」が誕生しました。
ーーふるさと本舗で一番大変だったことは何ですか?
船方:僕はふるさと本舗で全国の自治体を回る営業をしていたのですが、一番大変だったこと……それで言うとないんですよね。比較的好きでやっているので、仕事が趣味みたいになっちゃいます。一概には言えないですが、普通の人がやりたくないだろうなと思うことで挙げると、知らない人に急に電話してアポとって提案するメンタリティーだったり、営業だけでなく、色々なことを並行して進めなければいけないのは大変かもしれません。提案して、契約して、その後運用の設定をして、返礼品を登録して……お客様にサービスを届けるまでに様々な過程があるので、そこを少人数でやらなければいけないのは大変だったと思います。
ーーその中でもやりがいはどういったところに感じていますか?
船方:2つあります。1つは、日本は四季折々の食べ物がたくさんあるので、身近な人に地方の美味しい食べ物を紹介して、その人が食で地方を体験する機会を提供できること。もう1つは、地方の課題ってシンプルに言うと地元に人がいないことなのですが、ふるさと納税をきっかけにその場を知ってくれることで、土地の特産品や文化を伝えられたりとか、少しでも支援できるのは嬉しいです。まとめると、支援と言ったらおこがましいのですが、お金が足りないところにお金を生み出す仕組みを作っているので、誰かの課題を解決できることにやりがいを感じていますね。
ーー新規事業に携わる中での学びを1つ挙げるとしたら?
船方:僕は、比較的自分で何でもできると思っていた自信過剰なタイプなので、チームによって事業が成長するというのは大きな学びでした。例えば営業に関しても、うまく話せずに商談が終わった時には「ここはこうするんだよ」と教えてくれる人が周りにいたことで改善していくことができたので本当に良かったなと。一人では気づけないと思います。あとは、チームでやることの楽しさとか、同じ価値観の人がVOYAGEの中にはたくさんいるので、その点もすごく大きいと思いますね。
事業成長のために自分の苦手と向き合い克服した
ーー営業する上で大事にしていることを教えてください。
船方:3つあって、1つは相手目線です。新卒で入社したときの鬼上司にしつけられました(笑)。営業は、自分がやりたいことを押し付けても刺さりません。相手が何をしたいかが重要なので、何をしたいかについては聞き出すようにしています。過去に、クライアントから「何を言っているのかわからない」と言われたことがあって。自分が相手に伝えたいことに突っ走りすぎてしまって、相手からしてみたらその話を聞きたいんじゃなくて別の話が聞きたい、みたいな。コミュニケーションが下手だったんです、今もですが(笑)。なので、相手の立場になって相手の目線で思考することは特に意識していますね。
相手目線ができたら、相手を飽きさせないようにするのは大事だと思っていて、これが2つ目です。クライアントに、想像以上に自分たちのことを考えてくれているんだ!と思ってもらえるよう、事前準備はしっかりしますね。最後の3つ目は、日頃からオープンでいることを心がけています。と言うのも、自分から開示していかないと相手も開示してくれないので。相手目線で想像を超えるよう、自分から話すようにしています。
ーーコミュニケーションが苦手という中で、ここまで営業を頑張ってこれたのには何かポイントはありますか?
船方:事業成長のためです。苦手なものって、課題が明確なので、何をしたら克服できるのか比較的フレームが作りやすいんですよ。挨拶した方がいいんだなとか、会話のキャッチボールをする時は、相手からの質問に回答するだけじゃなくてさらに代わりの質問を返すとよりいいんだなとか。今まで意識してなかったから苦手となっていましたが、ここを克服するだけでコミュニケーションはだいぶ変わると気づきましたし、こうした自分の成長が事業の成長に繋がるので、克服したい!となりましたね。
ただ僕は、自分で手を挙げて学ぼうという姿勢でやったのでよかったと思っていて、やっぱりなんとなしにやってしまうと得られるものも少ないです。なので、目的と理由はセットだよねという、結論はそこに辿り着く気がします。
身を持って体験し、本来の課題がどこにあるかを見つけ出す
ーー新規事業を考える上で意識していることはありますか?
船方:1つあるのは、自分ごと化することです。世の中の不便なことや不都合なことを解決すると、誰かが喜んでそれがビジネスになると思っているので、そうしたものを探すために、まずは世の中で流行っていることを自分ごと化してとりあえずやってみます。例えば24時間ジムが流行っているから自分で24時間ジムに登録してみるとか。それで何か不便さを感じたらこれはお金になるな、と思いますね。
なので、ふるさと本舗が立ち上がってから農作業も経験しました(笑)。VOYAGEの休暇制度で長期の休みが取れるタイミングがあるのですが、その時に農園を1つ借りて農業体験をしてみたんです。これは今も続けていて、週に2回4時半に起きて、1時間半工作機を動かして種を植えています。結局、ふるさと納税をやっている奥の生産者が何に困っているかというと、害虫や雑草、天候に困ってるんですよね。こうしたことって体験しないで生産者に言われても「そうなんですね」くらいにしか理解できません。「スギナがめちゃくちゃ生えてくる!」と突然言われてもよく分からないじゃないですか(笑)。検索をすればスギナが雑草であることは分かりますが、生産者にとってスギナが生えてくることがどれくらいストレスで深刻なことなのかは分かりません。じゃあもういっそのこと借りた方が早いと思って友人と農園を借りてみたら、たしかにスギナはめちゃくちゃ生えてくるっていう(笑)。
雑草が生えることで何が嫌かというと、じゃがいもとかを植えているところに雑草が生えてきてじゃがいもの養分を吸っちゃうんです。それによってじゃがいもが十分な大きさに育たなくなってしまう。こうしたトラブルを防ぐために、農作業の中で雑草を抜く作業が発生するのですが、それが本来やりたい作業時間よりも長くかかる、というのが課題なんですね。雑草を生やさせないようにするための除草剤もあるのですが、日本は制度が厳しいのでじゃがいもに対する除草剤のジャンルが決まっていて、かつそこの農場で使って良いか試験をしなければいけず、その検証に時間がたくさんかかります。ここまで深ぼると、何のどのような課題解決をすればいいのかが見えます。
実際体験していないことを話して共感することは比較的できますが、当事者として体験して話すことで言霊が宿るので、そうした意味も含めてやっぱり僕は自分ごと化するのは大事だと思っています。
ーー長期休暇が終わった今も農作業を続けている理由は?
船方:シンプルに楽しかったからです(笑)。人は努力と捉えるかもしれないですが、僕は努力と思っていないところがあって、やってみたことを楽しめちゃうんですよね。目的は仕事のためでしたが、やってみたら「あれ、案外楽しくない?」みたいな。トライしていることを楽しむことで自分自身の枠って広がっていくので。あとは……採れた野菜が美味しいとかそういうところです(笑)。
ーー今後どのようにふるさと本舗の事業を展開していく予定ですか?
船方:ECは、挑戦したいと考えています。元々事業立ち上げの際に「ふるさと納税のものがECで買える」ことをコンセプトにしていたので。一方で、今の規模感で挑戦して大きなインパクトを出すことは難しいので、色々どうしようかと考えているところではあります。まずは年末に協業先と一緒にやってみて、その数値が想定より良い結果となればアクセルをかけてやりますし、いまいちだった場合は今別の案も仕込んでいるのでそれを進めようと考えています。
ーー船方さん自身の今後のビジョンを教えてください。
船方:青いですが日本を良くしたい、というのはあって、そのための目標がいくつかあります。ふるさと納税は方針として地方創生がありますが、今後何をきっかけに突如終わってしまうかも分からないので、そうなった時には食べ物の軸で事業をやりたいなと考えています。IT業界にいるとどうしてもITのことばかりになってしまいますが、モノは普遍的で変わらないし、食べ物の市場ってすごく大きくてまだIT化率も低いので、チャンスはまだあるなと。なので、食を通じて日本を良い方向にしていきたいですね。「良い方向」というのはみんな違うので、僕が思う良い方にしていきたいと思います。