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目指したのは“当たり前”にある存在。10周年を迎えた「コトバンク」が語るサービス継続の秘訣
変化にいち早く察知して対応することでチャンスが生まれる
内山 和幸
Kazuyuki Uchiyama
データベース事業本部 プロデューサー
ーーコトバンクが誕生するまでの流れを教えてください。
内山:まずサービスについて説明すると、コトバンクは様々な辞書や百科事典に掲載されている用語を一度に検索することができる日本最大級のWeb事典サービスです。信頼性の高い出版社・企業から預かった用語は現在240万語登録されており、ユーザーは無料で使うことができます。直近だと月間7,200万PVくらいあって、ゆるゆると緩いカーブで伸び続けていますね。
そんなコトバンクの誕生は、「知恵蔵」にあります。まだインターネットが普及していない頃、分からないニュース用語があった時は朝日新聞出版さんの「知恵蔵」や「imidas」といった現代用語事典を引いていました。しかしインターネットで気軽に検索できる時代になり、その「知恵蔵」が本の取り扱いを休刊することになりまして。それならVOYAGEのメディア運営の知見を活かして、時代にフィットした新しい知恵蔵を一緒に作りませんかと話を持ちかけたんです。
そこから「みんなの知恵蔵」というサービスをリリースしたのですが、結構手応えがありました。このサービスモデルはコンテンツの量が大きくなればなるほど伸びていくだろうと確信し、一つの事典だけでなくもっと幅広く用語を追加できるようなプラットフォームにしようとなって「コトバンク」という名前に変わりました。そのタイミングが2009年4月23日。「みんなの知恵蔵」から半年後くらいのことでしたね。
ーー業務としてはどのようなことをしていますか?
内山:既存辞書の更新・メンテナンス、新規辞書の導入、SNSやプッシュ通知の配信、サービスや広告などの改善、問い合わせ対応、出版社へレポーティングなど色々あります。対外的な窓口は僕が立っていて、マネタイズや開発などはデータベース事業本部のクルーみんなで見ています。
ーー10年やってきた中で大変だった出来事は何ですか?
内山:一番大変だったのは、コトバンクを立ち上げたばかりの頃ですね。利用者が全然集まらなくて、目標に届かない時期が長く続きました。そんな中でも、体制を変えたりコトバンク以外の業務をやりながら地道に続けて……芽が出てくるまでには結構な時間がかかってしまいました。コトバンクの売上が小さいと、辞書を提供していただいている出版社にお戻しできるものも小さくなってしまうので心苦しかったですが、辛抱強くお付き合いいただけて感謝しています。特にコトバンク開設時に参画していただいた小学館さんと講談社さんはその時の売上よりも将来を見据えて支えてくれたのだと思っています。
ーー序盤に追っていた指標はどのようなものでしたか?
内山:「用語数」「用語数あたりセッション数」「セッションあたりPV」を追っていて、中でも「用語数」を重要指標としていました。出版社にご協力いただくものなので予定通りに増やすのが難しく、数百語しか増えない時もあれば、ドンと30万語増えたりとか(笑)。昔は「無料で辞書を提供するなんて!」という感じで超えるべきハードルも多く、想定より時間がかかることが多かったですね。もちろんコンテンツは宝なので出版社が慎重に進めるのは当然ですが、今では事例が増え積極的に提供を考えていただける出版社が増えました。
変化にいち早く察知して手をつけることでチャンスが生まれる
ーーコトバンクを運営してきての学びを教えてください。
内山:やってることはシンプルに見えて、裏側では実にたくさんの状況変化に対応していった10年間だったなと。そしてこの「変化に対応していく」ことが大事だと学びました。広告やインターネット自体の状況だったり、会社や協業先の体制だったり、答えのないところから対応していくのは大変だけれども、そういった変化にいち早く察知して手を付けることで、逆にチャンスが生まれてくるんです。
例を挙げると、今となっては当たり前なスマホ対応をものすごく早く取り掛かりました。他にやっている人が誰もいないので「スマホでマネタイズしたい」とか、「スマホでSEOをやりたい」とか、ヒアリングや相談を持ちかけられることが増え、いつの間にか我々も知見が溜まっていく。スマホの潮流が来たなという時にはすでにコトバンクはだいぶ先に行っている、みたいな。こういった変化の対応を大小ありますがたくさんやることで、ここまでの規模に持ってこれたかなと思っています。
ーーコトバンクの面白さややりがいって何ですか?
内山:ぱっと思いつくもので言うと、コトバンクのアクセスランキングは世相が反映されていて面白いですね。あと、毎日プッシュ通知で送っている「今日のキーワード」も、うまくハマるとSNSでバズることもあって面白いです。やりがいの部分では、サービスを大きくしていくところもそうですが、個人的には「当たり前のように使われる」ということにとてもやりがいを感じています。
何かにドーンとコトバンクが紹介されることも嬉しいのですが、それよりも、周りの人が普通に当たり前のようにコトバンクを使ってくれていることがすごく嬉しいんです。ブログやSNSなどでコトバンクを検索すると、ユーザーが分からない言葉を調べて引用しているところなどが見られるんですけど、「ああ、当たり前のように使われているなあ」と実感できます。実はコトバンクのデザイン自体も当たり前にあるような、日常に溶け込むデザインを意識して作ってもらったというのもあって、メディアというよりもツールとして誰かの傍にある存在を目指しています。
ーー今後何か挑戦しようとしていることはありますか?
内山:日本に存在する言葉が全てコトバンクにあるという状態に少しでも早く近づけたいので、引き続きシンプルに地道にやっていこうと思います。あと、データベース事業本部としては2年ほど前からコトバンクの知見を活かした別の新しい事業に注力しています。なので、近い将来これらがVOYAGEの柱になるように僕も貢献していきたいです。